映画観賞
「この映画見たかったんだぁ」
サエが見たい映画は外国のアクション映画だった。
「この俳優さんかっこいいでしょ? ね? ね?」
俺に対しての同調圧力がすごい。
サエは映画館に貼られている大きなポスターに出ている一人を指さして嬉しそうに写真を撮りながら言う。
それはゴリゴリに気合の入った坊主の筋肉隆々マッチョなサブキャラのおじさん俳優だった。
確かに顔も体もかっこいいが、主人公のファンではないのかと驚く。
「この人? こっちの主人公じゃなくて? 主人公の俳優かっこいいよね?」
主人公の俳優は端正な顔立ちのハンサム。まさに「俺がハンサムで、ハンサムが俺です」みたいな顔をした男だった。
こういう顔っていいよなぁ。いかん、自己肯定感が低くなってしまう。
「かっこいいけど、こっちなのよ~」
意外とサエはこういうタイプの男性が好きなのか…、俺とは全く異なるキャラだ。
「ショックだった? ダイジョブダイジョブ、ユーちゃんにはこういうのは期待してないから!」
サエに背中をポンポンと叩かれる。
「あぁ、そうかいそうかい」
俺たちは付き合ってないので、仮にそんな期待されても困るが、なんかモヤモヤとした気持ちが残った。
映画はスパイの主人公と相棒のバディもの。
アクションシーンが激しくて迫力があった。
小気味のいい冗談のやり取りもテンポが良くて見やすく面白かった。
「でも、最後に死んじゃったんだよね…」
映画を見終わった後、俺たちはフードコートに移動し、ランチしているときに感想を言い合った。
「あれは衝撃的だったなぁ」
映画終盤、相棒を助けようとした主人公が撃たれて死んでしまうという衝撃が用意されていた。
「まさか主人公のほうが死ぬなんてね」
ハッピーかもバッドかもわからないエンドが妙に後味を残す映画だった。
主人公も生き残り、ハッピーエンドであってほしかった…。
「でもあれで続編ありそうな感じだったから、どうなるんだろ」
帰り道のこと、二人で歩いていると、
「あ! まただよ。耳栓運転」
サエがイヤホンを付けて自転車を運転している人を見つけた。
「耳栓って、イヤホンだけど…、耳栓みたいなもんか」
「危ないネェ」
「事故ったら危ないよな」
「事故るときは一人で事故ってほしい。あんなのに巻き込まれる人がいたら可哀そうすぎる」
「確かにね」
最近は自転車に乗っていたものが加害者になる事故が多いと聞くけど、イヤホンしながら、携帯見ながら運転すれば事故に遭いやすくなるのは当然だ。
けがするときも一人でけがをして学んでほしいものだが、できる限り傷つく前に気が付いてもらいたい。
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