ドラトの見解



 夜、買った映画のパンフレットを見ているとドラトが話しかけてきた。



「ユーサク君、今日の事故だけどね」



 ドラトガ短い手足を使ってのしのしと俺の体を登ってくる。羽で飛んでくればいいのに。



「今日昼に行ってたやつか? 何か気になるの?」



「君は見たかい? あのトラックと電柱を」



「いや、そんなによくは見てない」




 第一、野次馬の後ろにいたからどんな風になっていたかはよく見えなかった。わかるのはぱっと見でどうなっていたかくらいだ。




「あの状況には少しおかしな点があったと思う」



「おかしな点?」



「まずトラック。あのトラックは歩道側に倒れていたね」



「あぁ、そうだね。だから車道側から力が加わったんだろうな」



「確かにトラックには何か力が加わった痕跡、大きく凹んでいたね」



「あぁ」



「おかしいと思わないかい?」



「何が?」



 ドラトが何を言いたいのかがよくわからない。



「あれほど大きなトラックが横倒しになる事故だ。なら、なぜ他に事故に遭った車が近くになかったんだい?」



「!」



 俺はベッドに寝転んだ。確かに考えてみれば、必要なものが足りない気がする。

 あの大きなトラックを倒した車が。



「恐らく、あれを引き起こしたのは、我々の探している相手だ」



「マジ⁉」



 あの日、溶岩の力を持った男のことを思い出すと全身に鳥肌が立った。



「ほとんど間違いないと思う。他にも気になることがあるんだ」



「何が気になるのさ?」




「電柱について。確かにトラックの横転に巻き込まれたのは間違いない。しかしトラックが横転したことくらいで折れるかな? あの車が猛スピードで電柱に追突すれば倒れるかもしれないけど、あれは違う。ただ『横転したトラックに巻き込まれただけ』だ。そうなるとあの電柱は倒れるだろうか」




「ぶつかる寸前に急ブレーキで方向を変えたとかは?」




 そう言ってあの道は一直線の道路だったことを思い出す。急ブレーキで方向を変えればトラックは道に対して垂直で道をふさぐ形になるだろう。歩道側に倒れるとも考えづらい。




「それなら道路にブレーキをかけた跡が残るんじゃないかな」



 ドラトが一つ俺の案を否定する意見を出した。



「なるほど」



「どうしてそんなことをしたのかはわからないけど、電柱にはトラックからの力のほかに別の力が加えられているはず。証拠に電柱の先の方が少し曲がっていた」



「曲がっていたのか…」



 気が付かなかった、よくそんなことを確認したものだ。



 でも…いつ確認したのだろうか。



「つまりあの事故。トラックを倒したことと、電柱を曲げたことの二つの力が加わって起こされたものなんだ」



「なんで、そんなことわかるんだよ。いつ見たの?」



 あの人混みで姿を現していたら見つかりそうなものだが。



「まぁそこはうまいことやったのさ」



「あっそう」



 多くはツッコむまい。

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