危険運転
俺は勉強に関して大切な所で詰めが甘いところがあるようだ。
(まぁ、俺の点はほとんど平均点そこそこくらいだったんだよな。模試の出来が良い時も悪い時も。だから結果が良いも悪いも俺の点数よりも他の受験者の結果の良し悪しであったわけだと思うけど…)
我ながらこれは一種の才能であると錯覚してしまいそうだ。
「お互い受かって良かったね! 一緒の高校には入れて良かったよ!」
サエは嬉しそうに笑う。
「もうすっかり受験生の心を忘れたなぁ」
「確かに! 今の受験生の子たちに睨まれちゃいそう!」
「神経質になる子はいるもんなぁ、この時期」
二人で笑いあった。
それも受験期しか経験できない感情、それを持てるなんて羨ましいとも思う。
当然、傍から見てるからなんだろうけど。
思い切り息を吸い込む。
鼻に入る空気がすこし痛かった。
二人で歩いていると、
「チャリンチャリーン!」
自転車が俺とサエの横をかなりのスピードで追い抜いていった。
「キャ!」
「おぉ…!」
サエは驚いて立ち止まる。
自転車の主は気がついていないのかそのままスピードはそのまま走っていってしまった。
俺たちを追い抜いたように、他の人のことも追い抜いていった。
「危なかったね。大丈夫?」
「ホント…やんなっちゃう!」
語尾に力を込めながらサエは渋い顔をする。
俺の経験からこれはサエのまずい兆候だ。
「自転車で右側を走ってるし危ないなぁ。ユーちゃん見た? あの人イヤホンして、携帯見ながら走ってたよ! 信じられない! しかもあれうちの学校の制服だったし…‼」
サエの口から怒りが続々とあふれ出ている。
サエはああいう輩をみると非常にヒートアップする。そして怒りながらさらに怒りの温度を上げていくのだ。まさに沸騰していくようだ。
「あぁ、そういえばそうだったね」
確かにあの人が来ていた服はウチの高校の制服だった。
「携帯を見ながらじゃないと動けない人って何なのかな⁉ 駅の階段でも携帯見ながら下る人いるじゃない? もし踏み外して転げ落ちて、下にいた人を巻きこんだらどうするのかね⁉」
サエの怒りはとどまることを知らないが、言いたいことはすべて理解できる。俺も携帯を見ながら歩いている人は危ないと思う。
いつもならこのまま怒りが収まるのを自然に待つしかないのだが、今はそういうわけにもいかない。このままだと学校への到着が遅れてしまう。
「うん、うん。そうだね。でもお嬢さん、歩きましょう。遅刻しますよ」
フウとサエは息を吐いた。息を上に噴き上げて前髪に当てた。
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