その後
病院に搬送された俺は検査をうけ、問題がなかったので午後には退院できた。
少し打撲したところがあったから不安だったが、何も言われなかった。
しかし警察から事情を聴かれたため解放されたのは夕方だった。
俺の事情聴取をしたのは初老の刑事だった。
「君はそれであの男性を見つけたわけだね?」
物腰の柔らかそうな言葉遣いの一方で、目の奥はどこか獲物を狙う獣のようだった。
「はい、そうです」
何かすごく居心地が悪い。
あの男と戦ったなんてことがばれたらどうなるだろうか。
「そうか。長時間話を聞いて悪かったね。ご協力ありがとう」
その刑事はそう言うと柔らかく笑った.。
放火犯はやはりあの男ということで間違いないとのことだった。
以前からいろんなものに火をつけてボヤ騒ぎを引き起こしていたと予想されてが、最近はその方法が派手になっていたという。
警察の見立てでは、あの公園で火をつけていたが、思いのほか火の回りが強く、自分が倒れてしまったという。
そして通りかかった俺が気付いて男を救出した、ということになっていた。
事実としては全く異なっているが、警察が創った話は当事者の俺でも納得してしまうほどだ。
むしろ事実が信じられなさ過ぎて俺自身も警察の話を信じたかったのかもしれない。
後日男を助け、放火犯を捕まえたとして感謝状が出る予定だという。
男の記憶は曖昧になっているという。超人の力を持っていたことは全く覚えていないということになる。
「まぁ、今度そんな奴を見つけたら火に飛び込んではいけないよ。もっともこんなこと二度とごめんだろうけどな。あっはっは!」
事情を聴きに来た警察にそんなことを言われ、解放された。
迎えにはお母さんが来てくれた。
「まったく、ここんとこついてないわねぇ。厄が付いてるわ。間違いない。今度の休みに厄払いに行こ!」
確かに変な小動物にはとりつかれているが・・・。
夕食のこと、
「しかし優作が放火犯を捕まえるとはなぁ」
お父さんがびっくりしている。
「まぁ、アタシの息子だからね!」
お母さんが豪快に笑う。
二人には心配をかけたかと思ったが、そんなことは無いようだった。
警察が上手く事情を説明してくれたようだ。
ただ倒れている男を救助士と一緒に助けた、と。
意外と警察って空気が読めるんだな。
「確かに、俺の息子とは思えんなぁ」
「優作の父親じゃないかもねェ」
「えー、俺もやるときはやりますよー」
家族三人、皆で笑いあった。
俺は夕食後、自分の部屋に戻りベッドに体をゆだねる。
目を閉じる。
今日のことが再生される。
ドラトに言われてあの「怪物」を自分の体に取り込んだ時感じた胸の炎。
まだ、胸の中で小さく燃えているように感じる。
とにかく、
「今日は長い一日だったなぁ」
「さて、今日はお疲れ様、ユーサク君」
ドラトが胸の上に現れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます