溶岩の怪物を追え

キャッチ



「鬼はこっちって言ったてよぉ」



 こちらはただの高校生と変な生き物一匹。



「さっきのページをさらにめくって」



 ドラトはうろたえる俺に注文をつける。



 俺は黙って従うほかない。ページをめくる手は己の汗でグッショリと濡れている。



「これは…?」



 開いたページには謎の紋様が入っていた。



「そのページに捕まえるよ。」



「はい⁉」



 すると目の前で男の体からボッと何かが飛び出した。メラメラと、ドロドロとした「何か」見たことないものが現れた。顔はないのに何故か俺の方を見てる気がする。



 これがドラトの言うもがきのようなものだろうか。



「え?」



「相手に向かって左手を掲げるんだ!」



「お、オッス!」



 俺は左手をその「何か」に向けて出した。



 指輪とページの紋様が輝く。



「!」



 目の前に大きな紋様が現れた。周りの空気がそれを中心として渦を巻く。



「風が…!」



 風の流れが「何か」を掴んで、中心に引きずり込んでいく。



「スゲェ!」



 ついには渦の中心に引きずり込まれてしまった。



「?」



 左手の平に熱を感じる。熱は腕を伝って移動してきた。



「ドクン!」



 ちょうど心臓に差し掛かったあたりで、強く鼓動を感じた。



「あの時と同じだ」



 俺はその場に片膝をついた。



 体が熱い。炎が自分の中で大きくなっていくのを感じる。



 しかし今回は気を失うことも、倒れこむこともなかった。



「お疲れ様、優作くん」



「あ、お疲れっす」



 敵の熱い攻撃が収まったからか、感じる風はとても涼しい。



「そっかぁ、秋だもんな」



 目を閉じているとサイレンのようなものが近づく音が聞こえた。



「優作くん、余韻に浸って休んでるところ悪いけど」



「うん?」



「これはまずいんじゃないかい?」



「ん?」



「周りは火事、その中心には倒れている男と座り込んでいる男が二人。警察が来たら

どう考えるかな?」



「それは…やばいな!」



 俺はサッと立ち上がり走り出す。



「まだ元気に燃えてるな」



 火の壁をピョンピョンと飛び越え進む。



 ただ、あの火の中に取り残された男、彼のことが気に掛かる。



 このまま火に体が包まれてしまったら、救助が遅れて手遅れになるかもしれない。



「さぁ、行こう」



 ドラトは俺の襟元をちょんちょんと引っ張る。



「でも、助けないと…」



 俺は振り返り、男の元へと駆け出した。



 ドラトは何も言わず、じっと肩の上にいた。



 倒れている男に近づく。



 気が付かなかった。



 男の体は火傷などから傷ついていた。



「早く病院へ連れて行かないと助からなくなる」



 男の体を持ち上げた。



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