鬼は…
「そうか、優作くん! あの葦が生い茂っているところに隠れるんだ」
ドラトが叫ぶ。
相手が肩で息をしている隙をつき、俺は葦の生えている公園の沼地に身を潜めた。秋の葦は黄金色に体を輝かせ、風に身を委ねるように揺れていた。ここなら身を隠せる。
人目がいるなら相手も変なことはしてこないだろうと考えて入ったものの、予定が狂った。
しかし相手の能力を考えると広い敷地のあるここ以外で対面するのはまずかった。
公園にいる人に被害がなければいいが…。
「ここで、あいつの力使われたら、一気に火の海になっちゃうよ!」
「でもここしかない、耳をすませてみな」
遠くからサイレンの音が聞こえる。
(これって…?)
「消防車だよ、もうじきこの公園で消火活動が始まる」
遠目で見ると、公園から灰色の太い煙が上がっていた。
「ここしかないんだ、遠くに野次馬の姿もある、我々のことを知られたらまずい」
「で、どうすんの?」
ドラトは作戦を説明し始めた。
「まず第一に奴を人間の体から引き出す必要がある。そのためにあの男の、本体の方の体力を限界まで消耗させる。そして飛び出してきたところを捕まえるんだ。」
「…なんで体力がなくなると飛び出すんだよ。」
「我々は宿主からのエネルギーがないと力が発揮できないどころか、生きていけない。人間の体が倒れたらそれこそ終わりなんだ。そうなったら生き延びるために取る行動は一つ、脱出だよ。もちろんその状態で生きてはいけない、要は最後の足掻きを見せるはず。その瞬間で決めるんだ」
「え〜、やばいって…もし失敗したら…」
「終わりだよ、私の目的も達成できない、でも失敗はしないさ。命がかかってるんだ。これは決死の鬼ごっこなんだ」
「決死の鬼ごっこ…」
(なんてこった、もっと無邪気なもんだろうよ、鬼ごっこってのは)
「相手は最強の鬼だな」
「何言ってるんだい?優作くん」
ドラトは目をくりっとさせた。
「鬼は『我々』だよ」
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