やられる前に、やれるか⁉



「見つけた」


 ヌゥと穴から男が姿を見せた。


(鬼ごっこか、相手はとんでもない鬼じゃないか)




 男と対面した。



「?」



 男がドラトに気が付いた。何かを思い出すような表所を見せた。



「お前…そうか、お前だったのか」



 男はドラトを見て呟いた。



「走れ!」



 鬼ごっこが再開された。



 俺の足は想像を超えて速かった。



「そうかドラトがいるからだっけ」



「そう、オプションだよ。でもそれは相手も同じ」



「え?」



 ボゴン!と音がして振り返ってみると、奴は空に浮いていた。正確には高く飛び上がっていたのだ。



「ただのバケモン」



 男が空から溶岩を飛ばしてくる。



「くっ!」



 俺はフットワークを活かしてかわした。



 それはもう、ギリギリ。


 

 当たってないのが奇跡なくらいの、ギリギリだった。



 男が地に足を着けた。



(今度はそのまま追ってくるか。)



 しかしそんな予想と裏原に奴は動きを止めた。



「な??」



「ユーサクくん、手帳と指輪は持ってるよね?」



「あぁ、うん」



 ポケットから取り出す。



「避けているだけではダメだ。こちらも動かないと。さぁ指輪をはめて」



 ササっと指輪をはめて、手帳のページをめくる。



「試してみたことあるのは一個だけか」



「二番目を」



「これは光?」



「目を眩ませられるよ」



「わかった、やってみよう」



 俺はあの時と同じようにページと指輪をタッチさせた。指輪が輝きだす。



『世界に輝きを放ち、道を示せ』



 俺は男に左の手のひらを見せて叫んだ。



(しかしこのダサい呪文どうにかならんかね、恥ずかしくてたまらないよ)



 すると手の延長線上に小さな丸い点のようなものが生じ、次の瞬間、点は爆発し、眩い光を辺りにまいた。しかしその爆発は無音であった。



 発せられた光に男の目は眩み、目を押さえた。



「よし!」



(でも不思議だな、俺はなんともないのに)



「今だよ、ユーサクくん、攻撃だ」



「どうやって⁉」



「近寄って行ってキックなりパンチなりしてみて」



 ドラトがキョトンとして言う。



「…無理じゃない?」



「相手の体はただの人間だよ」



「…まぁね…」



「今ならできる、チャンスだよ。チャンスは無駄にできないよ」



「よし!」



 俺は男に向かって駆け出した。しかし体は少し震えていた。



(がんばれ! 俺!)



 俺は男の肩に飛び蹴りを入れた。男がゴフッと音を立てて倒れ込む。



「どうだ」



「ちょっと威力弱いかな」



「あんまり気持ちいいものじゃないよ〜、ヒーローって大変」



 男がムクっと起き上がる。目は未だ眩んでいるようだが、いくらか視力が戻ってきたようだった。



「やらないとこちらがやられるだけだよ」

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