鬼ごっこ?



「俺の能力は…」



 男が拳をギュッと握る。



 拳からドロドロとした赤く黄色く光るモノが溢れ出した。男が下品な笑みを浮かべる。



「熱い溶岩さ」



 さすが溶岩といったところか、一気にその周辺の気温がグッと上がる。



 しかし俺はそんな未知のものを前に冷や汗をかいていた。



「お前の能力は、何だ?」



 ジリジリと歩み寄ってくる男。



「何もしないのか? ならそのまま俺にやられろ」



 拳を俺に向けてきた。



「逃げろ!」



 ドラトが背後から叫んだ。



「⁉」



 男の動きが止まる。それを見て俺は駆け出した。



「待て!」



 男の溶岩が飛ぶ。危機一髪、俺はそれをかわした。



 全速力で走って逃げる。



「どうなってんだよー!」



 ドラトがピョコンと肩に現れる。



「溶岩、それが奴の能力なら事件現場に残っていたものとの辻褄があう」



 全力疾走をしている俺と、冷静に事実確認をするドラト。



「そんなことはいいよ! ドースンだよ! この状況」



「とりあえず作戦を練ろう。あの遊具の中に隠れよう」



 ドラトの言う通りに遊具に隠れる。船の形をした遊具で中が空洞になっているところに入った。



「奴の能力とやらが溶岩。あれに触れることはなんとしても避けなければ」



「その前に教えて、あれは何?」



「あれが我々の求めるものさ。その手帳に収めるべきもの」



「え! だってここに載ってるのと全然違う!」



「本体は人間の中にあるんだ。奴はあの人間の体を借りているだけさ」



「人の体を使う理由は?」



「私と同じ、この世界では『同居』しないと我々は生きることができない。もちろ

ん、運よく同居できたとしても、命を得るかはわからないけど」



「それであんなことを」



 奴が暴れたこと、事件を思い返す。あれは自分の力を試していたのだろうか。



 しかし俺には「なぜそうするのか」がわからなかった。



「生きるためさ」



 ドラトがあたりを気にしながら答える。



「奴は試していたんだ。自分がどういう力を持っているのか、を」



 俺にはそれを聞いてもよくわからない。



「人の子と同じだよ。自分を試して成長していくでしょ?人はその時間が長く、我々は短い。それだけだよ、生きるものは皆そう。問題はこれからのこと」



「『やられろ』って言ってたじゃん?このままだと、俺たち…」



「何もしなければ…死ぬ。これは生きるか死ぬかをかけたおいかけっこ、鬼ごっこさ」



「鬼ごっこ…」



 その時遊具にドゴン!と衝撃が走る。すると遊具の一部がドロッと溶けた。



「あーあ、市民の税金でできてるのに、俺たちの勝手な事情で…」



「君たち家族も納めてるじゃないか。これくらいは君たちの納めている税金内さ、多少壊す権利もあるさ」



「そりゃあね、でも権利はあってもやるとは限らないのが人間だよ」



「雑談はこれくらいにして、来たよ」



「見つけた」



 ヌゥと穴から男が姿を見せた。



(鬼ごっこか、相手はとんでもない鬼じゃないか)

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