現れたのは男



翌朝、俺の目にまた信じられないニュースが飛び込んできた。



なんと今度は民家が被害にあったらしい。民家は崩れてしまったようだ。



「こんな大事になっちゃって」



「ね?」

ドラトが肩に乗って言う。



ニュースによると、住民が現在病院で治療中のようだ。



「これもその同じ犯人?」



「うん、間違いなくね」



「それはそれは、会いたくないねー。そんなヤバイ人には」



テクテクと歩く、最近めっきり寒くなってきた。



「乾燥もしてるし、よく燃えんだろうな」



 怖いと思いながらも、他人ごとなのでどこか物語を聞いているような気分だった。



「優作君、ちょっと」



「ん?」



「どうやら我々は今日出会うことになりそうだ」



「え! 今から」



「うん、犯人との対面、この後すぐ! って感じ」

ドラトが目をパチクリさせる。



「いや、そのテンションおかしいから!」



(最近テレビも見るようになったから、悪い慣れをしてきてるし)



「で、なんでわかるの?」



「感じるんだ、気配を」



「前に言ってたやつね」



「うん、でね…」



「うん」



「尾けられてる」



「ハァ!?」



「ホント、距離にしたら三百メートルくらい」



俺は内心、汗をかきはじめた。


 内心だけじゃない、体にも冷や汗が流れている。



「マジか…やだな。逃げない?」



「いや、相手は意思を持って追ってきてるから。無理」



「なんで冷静なんだよ!」



「焦っても仕方ないさ。」



「じゃあどうする?」



「とりあえずそこの公園に入ろう。人がいれば向こうも下手なことはできないよ」



ドラトは短い指でチョンと道を示した。



俺は示された通りにするしかない。


「…と、こんなとこでいいか。周りに人もいるしな」

ドラトはあたりを見回してどこから来るのか、確認をしているようだった。



「どこから来るんだ…」

俺は額に汗をかき、緊張していた。



おおよそ楽しい場所であるはずの公園とは場違いの様子であったに違いない。



「後ろだ! ユーサクくん!」

ドラトの声で糸が切れたように、バッと振り返る。



そこにいた。



 見たところ年齢は若め、さわやかな雰囲気だ。



 普通の男だった。




 ただ一点を除いては…



「……! 手が岩…?」



 確かにそう見える。



(見間違いじゃない! こいつ人間か⁉)



 男は上半身に白いティーシャツ一枚を着ていた。動きやすい格好である。



 対面した男が口を開く。



「見つけたぞ」



 男が俺に向かって、一歩、歩み寄る。



「探してたのか? 俺を」



 俺は一歩下がって距離を保った。



「お前が初めての相手だ。グフフ」



 男が下品な笑い声をあげる。



(コレが放火を起こした犯人! 見た目は爽やかなのに性格が危なそうなんですけど〜)

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