決死の鬼ごっこ

現場にて





 放課後、実際現場にサエと向かった。燃えた車の処理も終わり、その跡は周りの焼けて黒くなったコンクリートがあった。現場は警察の黄色のテープで保存されている。周りには野次馬たち。


「何にもないね、やっぱり」

サエは腕をくんだ。



「うん、もう全部片されてるね」



「どんくらい燃えたのかなー。まあ被害を被った人がいなかったのはよかったね」



「車のオーナーは残念だけどね」



「でも…これは変だよね」



「うん」



サエが続ける。

「なんか、普通の火事の現場じゃないよ。初めて見たけど…。道路の一部が溶けてるじゃない」



「黒い塊みたいのがあるしね」



「これどこかで見た気が…う〜む」

サエが首をひねる。



(そういえば、これでいいのか、ドラトに訊きたいな)



そう思ったのも束の間、俺は背中にまたキュッとした寒気を感じた。



(わ! 久しぶりに来た)



 鼓動が早いのを感じる。なぜかここから今すぐにでも立ち去りたいという気に襲われる。



(なんだ? この感じ)



「サア、もう帰ろっか。まぁ…何も無いし」



「うん、そだね」



俺は気持ちは足早に、しかし実際は落ち着いてサエと歩幅を合わせた。歩いている間、ずっと鼓動がザワザワとして治るのに時間がかかった。



「じゃーねー、ユーちゃん」



サエと別れて早々にドラトが姿を現した。



「おいおい、人目につくよ」



「ダイジョブ! それそりユーサクくん」

ドラトはグッとした目で俺を見てきた。



「…何? それよりも行きましたけど、あの事件現場」



「うん、ご苦労様」



ドラトは俺に労いの一言。たった、一言。



「それだけ⁈」



「いやいや。まぁ今日のところはね。…でも…」



「でも何?」



「事態は私の想像以上の事が起こっているかもしれない」



「はぁ」



俺にはドラトの言っていることがまったくもってわからない。



すると携帯が鳴った。メールが届いた。



「サアからだ、えっと…『地学の教科書に今日の道路で見た黒い塊。あれと似たのが載ってるよ!堆積岩とかの単元のページ見てみて!』だって」



ドラトがズイッと身を乗り出して来る。



「優作くん、今それ見せて。すぐに」



「はいはい、地学はこれだな。えーと堆積岩というと…これか」



俺はそのあたりのページを開く。



「これだ!溶岩石、溶岩が冷えて固まったもの…ふ〜ん」



ドラトもページを覗く。



「似てるけど、この辺、火山、ないよ」



「…優作君、この犯人に私たちは会うことになる、多分近々」



「ハァ⁉」



「だから手帳と指輪は常に携帯してね。おやすみ」



ポンっと姿を消したドラト。



「…はいはい。仰せの通りに」



俺はバッグに手帳と指輪を入れた。

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