変化



—「おーい、火が来るぞー!逃げろー!」



ゴウッと巨大な炎が夜空を背景にしてその村に流星のように降り注いだ。



「うわぁぁぁぁ!」



人々が荒れ狂う炎の波を抜けていこうとする。その波から逃れた者、その波に飲まれてしまった者、人の血を吸った炎はさらに紅く燃えた。



人々が見上げた夜空に禍々しい笑みを浮かべた男が漂っていた。



「北の国からきた王が暴れてるんだ!」



男が手をサッと振ると炎の玉が降り注ぐ。



人が村を出る。



その男が彼らに向かって、手のひらを向ける。そこから次は雷が放たれ、彼らを焼き尽くした。一瞬だった。残ったのは黒く焼けた土だけであった。



その人物の撒いた炎は鳥のように飛び回り、村を無慈悲に飲み込んでいった。——













それからどのくらいが経ったのか、長く、長く眠りにつき何百年ぶりの目覚めのような気がする、俺は意識を取り戻した。



生きている…?



目の前にはドラトがいた。



「ドラト…。」



ドラトは丸い目をさらに丸くして、そして言った。



「おはよう。」



「そんなこと言う状況じゃねぇだろぅよ…、何を俺にやったんだよ。」



体がまだよく動かず、ろれつもうまくまわらない。



「その前に体の調子はどうだい?」



「調子って…良いわけないでしょ…う…ん?」



俺は体を起こし、肩を軽く動かした。



「気持ち、軽くなった?」



「ふむふむ。」

ドラトはうなづく。



「また一人で納得して。」



チラリと時計に目を移して驚いた。



「五分⁈ 五分しか経ってないの?」



「そうだよ。」



体感としてはもっと時間が経っていたと思ったのに(最早死んだとすら思った…)。



「で、その手帳を開いてみて。」



「え?うん…。」



言われるままに手帳を開く。



「これは…!」



「読めるかい?」



「あぁ。」

さっきまで何も書かれていなかったはずなのに、最初の数ページにイラストと名前、それに一文が記されていた。



「ドラト、これって?」



「力さ、手帳の中に封じられているね。」



「チカラ?」



「うん、君はこれからこれらの力を使えるようになったんだよ。」



「どうして?」



「まぁまぁ、それよりも使い方を説明するね。」

ドラトは短い指を立てた。



「まず、一ページ目を開けて。」



「はい。」

俺はページをペラっと戻して、一番初めを出した。



「左の指輪とそのイラストをタッチして。」



「こうか?」

グータッチするように指輪とイラストを合わせた、すると…



「おぉ!」




指輪の石が控えめに光り、そこのページももそれに同調するように白く輝き始めた。

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