登校の朝
週があけた朝、俺はいつも通りにサエと登校をしていた。
サエは今週に練習試合で他校まで行った話、試合の話などをいつもの調子で楽しそうにしている。
「朝早かった?」
「うん、毎度朝は早いね。準備もあるし、大変だよ!」
そう言いながらもサエの顔は明るい。サエは自分の好きなことの話をする時はいつも以上に明るい顔で話す。だからサエの好きなものの話を聞くのは楽しい。
話の中でサエがある話題を出した。
「なんかね、その日の朝行った学校の近くでね、放火みたいなのがあったんだって」
「放火?」
「うん」
「燃えてたの?」
「ううん、火は消えてて、跡があってね、野次馬の人たちとか。あとね、警察の人が話を訊いてた」
「へぇ、この近くでねぇ」
「うん、公園のゴミ箱が燃やされてたんだって」
「やだね、早く犯人捕まればいいのに」
「ねー」
話して歩いている途中、前から何人かの中学生とすれ違った。
「〜〜」
一瞬の出来事であまり会話の内容はわからなかった。しかし妙に大人びた、というか落ち着いて見えた。そして妙な気を感じた…気がした、あの背筋がゾッとする感じを、少し。
「あんな感じなんだ、最近の中学生って、なんか目つきが独特というか」
ハァ、とため息をついて、サエが、
「もー、そんなわけないでしょ!あの子達、最近噂になってる中学生だよ。イタズラをして回ってるっていう」
と渋い顔をした。
「あ、そうなの?」
「うん、なんか先生の車に傷をつけたり、いわゆる時代ハズレの不良っていうか」
「若気の至りってやつかな、多かれ少なかれみんな思ったこともあることだろうけど」
するとサエは今度は呆れた顔をした。
「でもさ、普通はやらないでしょ?」
「まぁねぇ」
「こんな時代にフツーいないっしょ? 変じゃない?」
いきなりサエの口調が荒れ始めた。
「おぉ、おぉ、なんか荒れてるなぁ」
そのまま何故かプンスカとご機嫌斜めなサエになった。どうやらサエは真面目な人に好感を抱くらしい。(まぁ、みんなそうだよね) しかし俺はサエに対して今日は違和感を抱いた。
「よくできるよな、そんな悪さ、今の時代に」
「うん、なんかリーダーの男子が特に悪らしいよ」
「悪…ただの中学生でしょ」
「よく知らなーい。もういいじゃん、ほっとこうよ、中学生の話なんて」
サエはプゥッとほおを膨らませた。かと思ったら、
「ね! そんなことよりもさ、三学期になったら開校記念日で平日休みになるじゃない?」
パァと表情を明るくした。
(サアのコロコロと表情が変わるのは、いつまでたっても慣れないな。)
そんなことを思いながら、
「うん」
と返事した。
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