開け!その一ページ
最近の俺たち
ひょんなことから俺の体に住み着いた謎の生物(?)、ドラト。これとの強烈な出会いから早二ヶ月が経った。
ドラトはというと、最初の一ヶ月間はほとんど寝っぱなしで、会うことも一日のうちに俺の部屋で、二、三十分ぐらいだったが、段々と起きている時間がここ一ヶ月で伸び始めた。
俺が学校に行っている間、外に出ている時は表に姿を表すことはない。しかし彼自身は起きているときは外の世界を見ているらしく、俺が部屋に戻るなり、ポンと姿を現して「あれはなんだ、これはなんだ。」と質問ぜめをしてくる時があって、なんだか子どもと話している気分になる。
今日は休日で家にいる。ドラトは休日のその時間を読書をして過ごすことが多くなっていた。今日も俺の机の上でせっせと小さい体についた小さい手で本のページをめくっている。
「今日は何の本を読んでるの?」
俺がそう訊くと、
「小説だね、優作君の本棚にあったのだよ」
と、目線を活字に向けたまま応える。
「どんな話?」
「ファンタジーだね」
「漫画とかは読まないの?」
「漫画はね、この間全部読んだよ」
なんかこんなマンがあったよな。主人公と命を共有する超生物の話。アレに出てくる生物も本好きだったっけな。
「え⁉ もう全部読んだの?」
「うん」
「何が面白かったとかある?」
「ん? 剣で戦う物語かな」
そう言いながらもドラトは黙々とページをめくり続ける。そのスピードが早くて驚いた。
(本の虫だな、竜のくせに)
「優作くん、今度ここにある本を読み終わったら、本を借りてきたいんだけど」
「ん?あぁ、それなら学校の図書館もあるし、自転車で少し行ったところにも図書館あるよ」
「ん」
ドラトはまた黙って読書を始めた。
(はぁ、全くいきなり黙るから、調子狂うんだよなぁ)
心の中でため息をつく。
俺は俺で、ベッドに寝転んで本を読み始める。最近は話をすることが増えてきたが、ドラトが起きている間、ずっと俺たちは話をしているわけではない。むしろ各々の時間をそれぞれ過ごすことが多い。
(そもそも自分の話しないからな、この人。ん? そもそも人じゃないけどね)
俺はチラッとドラトを見て、目線を本にもどした。
何十分がそれから経った。
しばらくするとドラトが大きなあくびをして、ゴロゴロし始めた。この反応を見せると疲れてきた証拠である。
「眠いの?」
そう訊くと、目をこすりながら、
「うん、もう今日は疲れた」
ドラトは俺の机の上にペタッと突っ伏した。するとスースー、と寝息をたて始めた。
(なんか…ホント、赤ちゃんみたいだな。まぁ生後数ヶ月みたいなものなのかな…そういうことにしておこう)
ドラトの体がポンと消えた。俺の中に戻ったらしい。(俺に自覚は無いけど)
休みの日はだいたいこうして過ぎていくようになった。
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