憑かれた、疲れた



「なら、ドラトで決定ね」



「うん」



 俺はドラトと一心同体になっていた。



 そう告げると、俺の肩の上でドラトはゴロゴロし始めた。



「…でもさ、今俺の体を離れてるじゃん?」



  ふと不思議に思ったことを訊いてみる。



「君の近くならば少々離れても大丈夫なんだ。でも今これ以上離れると、危ない」



 やはり淡々と答える。



「いやいや、じゃああんまり変なことしないでよ?」



「わかってるさ、無茶をするのは主義ではないからね」



  その時部屋のドアの外から、



「優作? 誰かと話しているの?」

 お母さんに聞かれていたらしい。



 するとドラトがピクリと身を起き上げ、

「私のことは内緒にするんだ」

というので、



「あぁ、電話してるの、今!」

 と、とっさに返した。



「サアちゃんと?」



「…そうそうサアと!」



 ふーん、とさして気にする様子もなくお母さんは階段を降りていった。



「はぁ」



 とため息をついたのはドラト。



「こっちがため息つきたいよ」



「今日は疲れたから、もう寝ることにする。」



 ドラトはあくびをした。



「どこで寝るのさ?」



「君の中でね」



 ドラトは眠そうな目をする。



「あ! でもさ、命を共有してるってことは俺の思っていることも…」



  俺が何を訊こうとしているのかを察したのか、



「あぁ、それは大丈夫。君個人の思っていることは私には分からない」



「あぁ、そうなの?」



「うん」



「ならいいや」



  ふう、と息をつく。



  しかし、ドラトが



「でも、お互いは繋がっているから、呼びかけてくれれば反応できるよ」



「あぁ、そうなの?」



 うん、と言ってドラトはまたあくびをした。



「疲れたから寝る。おやすみー」



 ポン、とドラトは姿を消した。




 静かになった(実際はいつもこの静けさ)部屋で一人呟く。




「はぁ、俺も今日、なんかスゲー疲れた」 

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