やはりランチは屋上で



 昼休みのこと、サエがクラスにやってきた。



「ユーちゃん。行こ!」



 サエは弁当箱を持っている。



(あ、今日はその日か)



すると、

「おいおい、彼女待たせんなよ〜」

 三人がニヤニヤしながら、いじってくる。



「違うって、そんなんじゃないよ」



そう言って、クラスを出る。しかし、



「いやー、絶対デキてるわ。あいつら」



「いいよなぁ、青春って〜」



 奴らの声が聞こえてきた。



「どんだけデカイ声で話してるんだか、聞こえてるし!」



 ため息をついた。



 自分の顔が熱い。



「ユーちゃん、何言ってるの?」



 サエが顔を覗き込んで聞いてくる。



「え? クラスの人の話がさ」



 サエは片手を添えて耳をすます。



「そんなの聞こえないよ」



「ウソー、こんなにはっきり聞こえたじゃん」



 サエはキョトンとした顔を見せた。



「まぁ、いいや。聞こえてないならそっちの方が都合がいいし…。」



「何それー、何の話だったのよ。」



「いいの、いいの。忘れなさい。」



 サエはウーン、と不満そうな顔をした、結局屋上に行くまで拗ねていた。




「そういえば、今日のプレー凄かったね!」



 晴れた空に伸びをしながらサエが言った。



「そう、初めてね」



「ホントスゴイよね、バレー部から、バシッ!、とブロックして高いジャンプからのスパイクで点決めちゃうなんて。意外と才能あるかもよ!」



 サエはジェスチャーを交えて話す。



「いやいや、まぐれだって、アレは」



「そうかなぁ。でもみんなびっくりしてたよ」



「俺が一番驚いてるよ」



「なんでよ? ユーちゃんが自分でやったんじゃないの」



「なんかさー、ゆっくりに見えたんだよ、全部が」



 俺はあの感覚を説明した。しかし、



「…ふ〜ん」

サエは薄い反応を見せた。



「ふーんって」



「だって分かんないもん。その感覚」



「…まぁ俺も分かんないしね」



 俺はハハと笑った。



「でもその感覚があればなんでも出来るじゃない」



「あぁ、そうかも。でも自分で起こした感覚じゃないから」



 サエは腕を組んで少し考え込んだ。



「ふーむ…。じゃあ全部ただのまぐれかもね、今日のプレーもその変な感覚も」



サエは真面目な顔で言った。その姿に笑ってしまった。



「何よ! マジメに考えてるのにー!」



サエはプイッと顔を向こう側に向ける。



「あー、ゴメンゴメン」




昼ご飯を終え、クラスに戻ろうとした頃、



「!?」



俺は不意に何か「気配」を感じた。それは怖い時に感じる「ゾッ」とする感じに似

ていた。背中に寒気も走る。



(何だ、この感覚。見られてる気がする。でも何に?)



「ユーちゃん? どうかした?」



「…なんか見られてる気がして。あっちかな」



  俺はフェンスまで行って、影になっているところを見た。しかしその気配のもとは見つからなかった。

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