試合観戦

 


 ボールは見事相手のコートに落ちた。

 


 その瞬間、張り詰めていた糸が切れたように、



「お…おぉーーーーーーー!」



  時が「元に戻った」。



  チームメイトが駆け寄ってくる。



「スゲーよ! フジ! あいつからボール取るなんて!」



「しかもブロックもめちゃめちゃ上手かったし! ジャンプもめっちゃ高かった

し!」



「あぁ、うん、ありがとう。まぐれ、まぐれ」



 いまいち俺がやったのか、わからなかったが、新崎がキョトンとした顔をして、眺めてきたので、若干、実感が湧いた。



(そうだ、サアは?)



 俺はまた隣のコートにいるサエを見る。サエも見ていて、俺に向かって親指を立て、言った。



「やったね。——」



 後半は何を言ってるか分からなかったから、俺も小さく親指を立てて返した。





  結局試合は負けてしまった。今は女子の試合をコートの傍から見ている。



「お! 女子の試合始まったな!」



 但馬、平井、遠山と試合も観戦している。



「うちのクラスは勝てるかなー」



「でもフジ、お前どっち応援すんのさ?」



 但馬が俺に妙な質問を投げかけてきた。



「え? どっちって?」



「わかってるだろー、彼女のチームをオーエンすんの?」

 平井が横からいたずらっ子の顔で言ってきた。



「ブフッ!」



 俺は噴き出してしまった。



「なー、どっちなんだよー。まぁ彼女だよなぁ」



「彼女頑張ってるゼー!」



  クラスメート三人はニヤニヤする。



「ちょっと待ってよ、別に付き合ってるわけじゃ…」



「おいおい、一緒に登校して、昼ごはん食って、付き合ってません、は言い訳にナンねぇゼ?」



  但馬は的確に事実のみを言ってくるもんだから、困って、

「いやぁ、なんとも言えんなー」

 ハハ、と乾いた笑いしか出なかった。



「さっきも二人で見つめあってヨー」



「…見てたんだ…」



「もうクラスのほとんどがそう思ってんじゃねーの?」



「付き合ってないけどなぁ。見つめあってたわけじゃないし」



 するとまた平井が横から口を出す。



「いいじゃん、あいつカワイイゼ、結構」



  俺はどう返すか返答に困った。




「でもさー、女子っていいよな〜」



  今まで黙ってた遠山が唐突に言いだすから、みんな噴き出した。



「どーした! 急に!」



「なんか女子ってカワイーよなー、ってさ」



「変態だな! お前」



「いや! これは健全な男子なら思う事だろ!」



「ふーん、じゃあお前は汗だくの女の子が好きだと?」



「そ、そーは言ってネェ!」



  仲良し三人組はポコポコとケンカという名のじゃれ合いを始めて、楽しそうにしてる。




アハハ、と笑うクラスメートを横目に、俺はさっきのあの「感覚」を思い出した。



(ただの偶然かな…?だよな…)

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