事故…



それからはあっという間にテストが始まり、あっという間に過ぎ去った。



テスト週間を終えた週末の朝、俺はサエと大会会場に向かっているところであった。



「…あぁぁ。何でこうも平均的な点を取り続けるかねぇ」



大きくため息を吐く。



 今回もテストの成績はいつもと同じだった。



 というかむしろ内容が違うテストで結果が毎回同じってのも才能な気がする。



「まぁまぁ。そんなに考えすぎないの」



「結局、あの豆知識全然使えなかったし、またサアに負けたし…」



「次は私が直々に教えてあげよう。あーそれにしても良い天気で気持ちいいなぁ!」



サエはテストで俺に勝ったのもあり、上機嫌である。いつも勝ってるくせに…。



「まぁ、今日はサッカー楽しんで」



「もちろん! そのつもり。やるからには勝ちにいくよ!」



会場に着くなり、サエは部活の集合場所に行くため、会場入り口で別れた。俺は対戦表を確認し、そのコート近くのベンチに腰掛けて試合の始まりを待った。




「試合どうだったの? 今大会は?」



「良かったと思うよ。楽しかったし」



サエのチームは一回戦、二回戦を突破し、三回戦目で強豪校にあたり負けてしまった。



「でも強かったなー、さすが強豪校って感じだった」



「結構有名なんだ?」



「うん、明日に勝ち残って、優勝して県大会に行くと思うよ。関東大会常連だし、全国大会も何度も行ってるし。私立はやっぱり強いよね」



「そうか。まぁ楽しめて良かったね」



「うん!」



  今日の感想を言い合いながら歩いて、個人経営のコンビニに差し掛かった時、急に大地がゴゴゴ、と揺れ始めた。



「あ! 地震だ。」



「結構大きいね。」



  最初は小さな揺れから始まったが徐々に揺れは増していき、動くことはおろか、立っているのが困難なほどになった。



「これはヤバイぞ!」



「ちょっと…もう立ってられない。」




俺たちはその場にしゃがみ込んだ。この体勢のまま揺れが収まるのを待っていればよかった、しかしこの地震が二次災害とも言える出来事を引き起こした。二人の頭上にあったコンビニの横看板が重力に順従に落ちてきたのだ。




「わっ!」




俺はとっさにうずくまっているサエの体を自分の体で覆ってかばった。そのため彼女は傷を負うことも痛みを感じることもなかったが、俺の背中、後頭部が落ちてきた看板に叩かれてしまった。ドン、イヤな音が鳴る。



「ぐ…」



「ユーちゃん!」



 俺はそのまま倒れこみ、遠くなる意識の中で彼女の声を聞いたが、すぐに聞こえなくなり、目の前が暗くなってしまった。








―なぜあの人間は他人を庇ったのか。何が奴を動かすのか。私はそんな彼に興味を持った。―

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