芽生え

「ステータスを見せてみなさい。」


「え、はい…!ステータスオープン…。」


 俺のステータス画面が表示される。


 周りの人間の落胆した声、蔑む目、呆れた顔。そのどれもが、俺がハズレだと言うことを物語っていた。


「装備複製…。とんだハズレスキルね。

皆さんにはこの国の最高の装備を配布致します。鍛冶師は他にもいるし、装備に追加効果を付与できる付与術師もいます。」


「俺鍛冶師。武器も防具も作れます。」


「僕は付与術師…。」


 クラスメイトの2人が言った。


「ほら、貴方がいなくても装備は作れます。しっかりと教育も致しますので、その内、この方々も最強の防具を作れるようになるでしょう。貴方の活躍する場所はせいぜい荷物持ちでしょうか?笑」


 戸惑っている俺に、追い打ちをかけるように王妃がそう言ったのだ。


(そうだよな…。やっぱり俺はハズレなんだ…。)


「そんなことありません!」


 姫野が声を上げた。


「桐山君もしっかり教育を受ければ強い防具も作れるようになるはずです!」


 姫野は庇ってくれたが、王妃はこう言ったのだ。


「そんな者を教育している暇はありません。魔物はいつこの国を攻めてきてもおかしくありません。だったら、少しでも役に立つ方に力を注ぎます。

まぁ、ただ戦乙女様がそうおっしゃるなら、装備のストックでも作ってもらいましょうか。まぁ、使う人がいるかどうか…。笑」


「ハハハハ!笑」


 大勢のクラスメイトが笑いだした。


「誰もお前の何か使わねーよ!笑」


 鬼石がそう言い、数人の取り巻きも大笑いしている。


「大丈夫だ、俺は使うよ!」


「私も使うわ!ダメスキル何かじゃないよ!」


 俺は何も言えず俯いてしまっていた。


「まぁ、いいわ。それより皆さん、これから装備をお配りします。その後、この世界の勉強をしてもらいながら、戦闘職の皆様は戦闘訓練、生産職の皆様は生産の教育と、戦闘時の立ち回り訓練を行ってもらいます。

ちなみに、先程のハズレの貴方にお渡しする装備はございませんので。周りの迷惑のならないようにお願いしますね?」


(見返してやる…。)


 気付けば、そんなことを考えていた。


──────────


 数日が経ち、皆自分のスキルをうまく使い、戦闘が様になっていた。生産職のクラスメイトも普通よりも少し強い防具を作ったり、高い品質のアイテムを作れるようになっていた。


 俺はというと、城の庭の隅で一人で黙々と防具造りに勤しんでいた。

 姫野と勇気が王様へ直接頼み込んでくれたことで、簡易の防具と少しの素材をもらうことができた。

 最強装備に触れさせてもらうことができず、平凡な装備の劣化版ばかりが出来上がる。


 作っていてわかったことがある。

 ・1つの装備を作るのにMPを消費する。MPが減ると目眩や吐き気を催してふらふらになってしまう。無くなっても死んだり、気絶することはないが、かなりの倦怠感を覚える。ポーションで回復もできるが、そんなものをもらえるはずもなく、長時間休むことで少しづつ回復するようだった。

 ・装備は、革や石などの素材からも作れるが、持っている防具も素材として使い、別の装備へと作り変えることができる。その時余った部分は素材へと変換されて出てくる。


 それだけ。スキルレベルがあがることはなく、俺のレベルがあがることもなく、スキルの項目にある"????"と言うのも分からず終いだ。


「くそー…。こんなんじゃ2人を守る防具なんて作れねぇよ…。」


 その時だった。


「ま、魔物だぁーー!!!」


 誰かの叫ぶ声が聞こえた。その声は恐怖していた。


 その声を聞きつけ、城中がざわつき兵士が城の防衛に周った。

 国を守ろうと兵士が城下町へかけて行く姿も見えた。

 国自体はそんなに大きくはない。地球にあるような国の規模ではなく、市ぐらいの大きさだ。その周りを大きな塀が囲っている。


「やっと戦えるのか!!」


「やってやろうぜ!!」


 戦闘職の訓練場の方からそんな声が聞こえた。


 俺は戦う術もない為、城の中へと避難していた。


「た、大変です!!」


「どうした?」


「敵の数が異常です!2,000…、いや、3,000はいます!!中には大型も!」


 城の兵士もかなり動揺しているようだった。

 国の危機的状況なのはすぐに分かった。


「仕方ない…。まだしっかりと教育はできておらぬが、勇者達に戦ってもらおう!彼等ならやってくれるはずだ!」


 王様がそう言うと、クラスメイトを集めに兵士が走り去っていった。


 城に残された生産職のクラスメイト達が怯えている。

 まだ、ろくに準備ができてないので当然である。


 そこに王妃と数人の兵士が現れた。


「なにをしているのですか。貴方達も戦闘の準備をしてください。この国は貴方達にかかっているのですよ?」


 その声は、この場を凍りつかせた。


「大丈夫です。この国の兵士はとても心強い。必ずや貴方をサポートしてくださいます。安心して望んでください。」


 さっきまでの威圧感は嘘のように、笑顔で、穏やかな口調でそう言った。


「そ、そうだな…!兵士さん達を信じよう!戦闘職のみんなも強いし大丈夫だ!」


「うん!行こう!私達でサポートしてあげないと!」


 王妃の言葉に鼓舞されたのか、さっきまで怯えていたクラスメイト達は希望の表情に変わり、城から出ていった。


「貴方もですよ?何をぼーっとしているのです。早く行きなさい。」


 また冷酷な表情に戻り、俺にそう言った。

 兵士が俺のもとへ駆けつけ、剣を抜き、俺へ突き出した。


 俺は、抵抗もできず城から出ることになった。



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ハズレスキルの最強装備職人 矢舘 水 @meron931

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