愛酷

骨身

第1話

「せんせい、せんせい。」

みんみんみんみん、油蝉が泣く中、ひとつの幼い声が私を引止めた。

放課後。ぶっちゃけ廊下は暑いから早く職員室に戻りたい。

「どうしたの?」

「あのね、私気づいたんだけど。」

「うん。」

早く終われ、どうせ大きい蝉がいたとか、クラスの子が猫拾ったとかでしょ。

「明日のアサヒって言葉あるでしょ?」

「あるね。」

「私、明日のアサヒも今日のアサヒも繋がってることに気づいたんだけど。」

「え?」

難しい話になってきた。

「この前、いつも通りお外でお母さんを待ってたの。そうしたらこの前はちっとも眠くなくて、起きてたの。そうしたら、今日のアサヒは沈んで、明日のアサヒがきたの。」

「家に帰ってないの?」

「うん。いつもお母さんどこか出かけてるから。」

明日のアサヒも、今日のアサヒも、私たちは全部同じように違うものとして捉えてる。

音読カードの歪な花丸も、

くしゃくしゃの学級懇談会は参加しませんに丸がついた紙も、

全部当たり前じゃないんだ。

全部、全部。

私は背中にひやりとした汗を感じて、その子が帰ってもしばらくは職員室に戻れなかった。

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愛酷 骨身 @kotumigaikotu00

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