第2話 労働

 この国には、大きく分けて2種類の人間がいる。奴隷労働階級の人間と上流階級である。この2種類の人間は支配される側と、する側とも言える構造である。私は、勿論奴隷労働階級である。その中でも、更に細かく分類されるのだが、この二つ程大きな差異はない。


 私は、奴隷労働階級でも、上部の「メディア統制省」で、働いている。聞こえは、エリートなのかも知れない。実際、私は必死に努力したし、この仕事に辿り着くまでは、幾度も困難にぶつかり、同志を蹴落とし、時には...


 その話は、やめておきたい。私は、そうするしか無かったと言っておこう。自分の心を欺くためにも。こうする以外ないのだ。


 メディア統制省では、実際に私が、何かを議論して決定を下すような仕事ではない、私は大量の検閲前の出版物や事実を改変するのが仕事である。それを一日15時間続ける。これでも私は恵まれた労働時間なのである。


 そもそも、私たち国民には何かを決める権利はない。大事な決定権は全て外国人にあり、私たち国民の生殺与奪権も全て彼らは持ち合わせている。そう、この国では、外国人による、暴力が許されている。それだけではない。どんなに残虐な事件が起ころうと、彼らは、起訴されず裁判に持ち込むことすらもできないのだ。

 

 私たちはもはや、何もできない。ただ、天命をダラダラと支配下で過ごし、最期はのたれ死んでいく。弔うことすら許されず、私たちの死体は剥製となる。これが、高く売れたり、上流階級でコレクションされているのだ。特に価値が高いのは、妊婦。


 彼らは、残虐かつ最低な倫理と思考で、それを好む。何故なのか、私には理解できないが、人気であるのだ。ああ、そしてこの国には、人間の剥製工場だって普通にある。そこで、私たちは、人権なんかも守られず、最低倫理で管理される。


 私たちは、この国に生まれた蝉同等の生物なのかも知れない。いや、蝉以下だったのかも知れない。彼らは、囚われなければ自由である。しかし、私たちには自由はない。


 私たちの仕事場は、細かいブースに机大量の出版前の原稿がある。そのほかに、労働省から送られてくる、資料がある。実際には、そちらの方が多い。私の場合は特に多い。この無機質な窓のない部屋はいつも窮屈で外すら見ることも許されない。そこに、大量の人間が敷き詰められて仕事をさせられる。


そして、今ブザーが鳴りその轟音が部屋中に響いた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リベラルX @Otonenon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る