こっちの世界での生活
さて、長々と過去話をしてしまったな。 そんなこんなでこの世界に来てからというものの色々なハジメテを経験させてもらい、向こうの世界とは違いとても楽しい生活をさせてもらった。
例えば学校、向こうじゃ貴族の子息やご令嬢しか学校に入れず平民は学のないものが多かったが、こちらでは誰でも入れるのだから、当初は驚いた。 それでも通っていく内に友達ができたり勉強ができてきて楽しくなったりしていた。 それと友達の家に招かれた際は初めてTVゲームをやらせてもらった。 友達の家に招かれるのも初めてだし心が明るく楽しくなっていくのがわかったものだ。
某RPGを見させてもらった際、俺は勇者に少し自分と重ねてしまい少し泣いてしまったらしいが、その都度友達が慰めてくれた。 その話はたまに会話の中に表れて少し困惑してしまうが。
「ほんとにこいつが俺んちで急に泣き始めるから母ちゃんに怒られるはもう散々だったぜ」
「その話そろそろやめてくんない? あんときはほんとに悪かったって言ってんじゃん」
そんな話をしながらカウンターで一人砂糖とミルクをたっぷり入れたミルクティーを飲むやつが一人。 彼こそ俺の友達というか悪友の"嶋田 悠"。 昔はいたずら好きでよく怒られてた奴が今では出版社の編集者なのだから世の中わからないものだ。
「いぃ〜や! 俺は何度もこの話をする! いやしなくちゃならないのだ!」
「意味わかんねぇ事いうなや! 何が目的だ?」
「目的? んなもんねぇよ。 ただ泣き虫のお前が一端の喫茶店マスターなのが嬉しいからついつい話しちまうだよ♫」
「まじで何言ってだ?」
「まぁ強いて言うならミルクティーおかわり」
「たまにはコーヒー頼んだら?」
そんな感じでたまに店に来てはそんなことを話している。 店に来るお客さんは時間に余裕があるサラリーマンや先代からの馴染みの客、近所のマダムたち、学生など様々である。
おかわりのミルクティーをカップに注いで、ゆったりしていると悠のスマホがなり始めた。 スマホに表示された名前を確認してから電話を取り、しばらくして通話を切った。
「担当の作家さん?」
「ん? あぁ、やっと原稿できたから取りに来てくれってさ」
そう告げると、悠はミルクティーを飲み干してお金をテーブルに置いて席を立った。
「ごっそさん、また来るわ」
「ありがとうございましたぁ」
昔では考えられない、こんな日常を俺は噛み締めながら、お客さんからの注文をとっていくのであった。
異世界からやってきた元勇者の日常 ken @k-02
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