現在は
これがここにやってくる前の俺の過去だ。 あっちの世界で俺は魔王を倒したはいいがまさか自分が使い捨ての道具にされ、最終的に廃棄される運命だったのだが、何の因果かこの世界に流れ着いた。
なぜこの世界に流れ着いたかについては、実のことを言うと俺にもわからない。 がけ下に落とされてすべてに絶望した俺は(もういいや・・・・・。)という感情が頭の中や心の中に広がっていった。 しかし次に目を覚ますとそこは病院の中だった。
当時の俺はあんなことがあったからか周りの人間を信用できずにいて、病院からの脱走や医者や看護師、ほかの患者に対して暴れていた。 普通であればそんな奴なんてほっておくのが普通だろうが、一人だけそんな俺を見捨てずに世話してくれた人がいた。 彼の名は【相澤 宗助】、俺の父親代わりの人だ。
というのも俺はどうやら彼の喫茶店の前で倒れていたらしい。 閉店作業中に突然店の前が光り、玄関を開けると光の中から血まみれの子供が倒れていた。 そんな状況、助けない方がおかしいとの事だ。
最初は宗助さんにも敵意向きだしで、ある程度の距離を持って心を開くことはなかった。 でもそんな俺を必死で世話してくれていつしか少しずつ心が開けていった。 俺が悪いことをするとちゃんと怒ってくれるし、良いことをするとほめてくれる、そんな当たり前のことだけど今まで感じたことがない暖かさが心に広がっていったのだった。
それから俺は宗助さんの元で一緒に暮らすようになっていっていつしか家族のようになっていった。
しばらくたって宗助さんは俺に向かってこう言ってくれた。
「今日から君の名前は【相澤 大和】だよ」
初めて名前をもらってうれしかった。 向こうの世界でも一応名前はあったが、弟に名前を奪われ、いつの間にかお前やおい!と呼ばれるようになった。 そんな俺に初めて名前が与えられたのだ。 うれしさがこみあげてその場で泣き始めてしまった。
あまりの大泣きに宗助さんはものすごい戸惑っていたなぁ。 それに初めて学校にも行かせてもらった。 どういうわけだか知らんがこっちの世界に来た時、俺の体は7歳ぐらいまで小さくなっていた。 たしか当時魔王を倒した時は10~12歳ぐらいだったのだが、どういうわけか7歳まで戻ってるなんてどういうことなんだろうか?
まぁあんまり深く考えるとめんどくさそうだからやめとこう。 そんなわけで小・中・高・大行かせてもらえたのはうれしかった。 しかし悲しい出来事もあった大学卒業まじかだったか父宗助さんが亡くなってしまったのだ。 ただ90歳の大往生だったと思う。 しばらくは動けなくなり色々やる気はなくなっていたが、卒業してから俺は必死に猛勉強して何とか父の店を再開させるまでできるようになっていった。
とまぁこんな感じで俺は今ここで元気に生きている。 あっちの世界で得ることはなかったすべてを俺はここで手に入れていく。
今日も今日とて、父の代からのお客さんや新規のお客さんが入ってくるドアのベルを音を聞きながら挨拶するのであった。
「いらっしゃいませ!!」
異世界からやってきた元勇者の日常 ken @k-02
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界からやってきた元勇者の日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます