第9話:少しずつホラーになって行く極楽荘。

「井戸川っち、あの浪人生さん、誰かに強請ゆすられてたみたいね」

「そう言ってるよ」


強請ゆすられてたって?・・・誰に?」


吉子が浪人生の霊に聞いたところによるとだな・・・。

なんでも浪人生は隣の部屋のアイドル「小松 麗華こまつ れいか」と

デキてたみたいだ。

隣同士で挨拶してるうちに仲良くなって、年上の浪人生が麗華の悩みとか

相談事に乗ってやってるうちにラブリーな関係になったらしい。


もちろんアイドルは恋愛禁止、音楽事務所にバレたらお目玉を食らう。

それより怖いのは週刊誌、アイドルと浪人生とのスキャンダルなんて美味しい

ネタだからな。


そのことを知った、浪人生の知り合いかダチに、ふたりの関係を知られて

バラされたくなかったらって金をよこせって強請ゆすられてたってことらしい。

その脅迫に金銭が工面できなくなったことと、終そうにない脅迫に耐えられなく

なった浪人生は、そいつを呼び出して殺してしまおうと企んだか逆に返り討ちに

あって殺されたってことらしい。


それを全部、吉子が浪人生から聞き出した。

それだけ分かってたら、すぐに犯人捕まるだろ?警察の捜査なんかいらない

じゃん。

あとは浪人生を殺った犯人を特定するだけか・・・。


こうして極楽荘に浪人生の幽霊の住人が加わった。

死神はいるわ、幽霊はいるわ・・・少しずつホラーになって行く極楽荘。


「退屈しないアパートだよ」


「井戸川っち、退屈なら私とエッチしちゃう?」


「退屈しないって言ったんだよ」

「殺人事件まで起きるし、変人ばっかだし、極楽荘でまともなのは俺だけ

だな・・・」


「井戸川っちは変人じゃないけど変態だよ・・・ど変態、どスケベ」


「誰が変態でどスケベなんだよ」

「つうか、おまえさ・・・いつまで俺の部屋に居座るわけ?」


「井戸川っちが死ぬまで・・・」

「井戸川っちの魂持って帰るのは私だけだからね・・・他の死神には渡さないから」

「だけど、まだ死なせない・・・エッチするまではね」


「なんだよ、俺が吉子とエッチしたあとは死んでもいいってことか?」


「なに言ってるの・・・エッチは一回したらそれで終わりってことないでしょ?」

「井戸川っちが元気な限りエッチは続くんだからね」

「私を死ぬほど満足させてね」


「死ぬほどって・・・死神だろ?死んでるようなもんじゃないかよ」

「死神って体力に限界さなそうだし・・・それ考えたらちょっ考えるよな

だから俺が死んだほうがましかも・・・」


「だからまだ死なせないって・・・」


「エッチは後だ・・・今は浪人生の件をかたずけないと・・・」


「犯人の正体分かるよ」


「うそ・・・そうか浪人生、犯人の顔見てんだよな」

「で、浪人生、犯人誰だって言ってんだ?」


「名前は「滝川 亮司たきがわ りょうじ」って人」


「このアパートにいるって言ってる」


「え?うそ・・・誰だ?」


「坊主・・・丸坊主って言ってる」


「坊主って、それ明智さんの隣のピン芸人か?」

「犯人は路面電車?」


「殺された人がそう言ってるんだから間違いないね」


「犯人分かったんだから、部屋に帰ってエッチしようよ、井戸川っち」


「いやいや、ピン芸人放っておけないだろ・・・そんなヤバいやつ」

「警察に教えなきゃ」


「井戸川っち、幽霊の言うことなんか警察は信じないよ」


「ああ、そうだなうかつに警察に浪人生の話をしたら逆に、なんでそんな

詳しいこと知ってるんだって怪しまれるに決まってるな」

「そもそも吉子の存在自体誰も信じないだろ・・・死神なんて」

「さてとどうしたもんかな・・・証拠もないのにピン芸人のところに

行っておまえが犯人だろうって言っても、素直に白状するとか思えないしな」


「警察が動かないのは浪人生の胸に刺さってた狂気から指紋でてないから

なんだろうな」


「だけど、刺される前に犯人の腕を引っ掻いてやったって言ってるけど」


つづく。

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死神は女子高生(極楽荘の賛劇) 猫野 尻尾 @amanotenshi

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