第8話:殺された浪人生。

ある日、吉子が奇妙なことを言い出した。


「井戸川っち・・・このアパート死臭がするね」


「し、死臭だって?」


「来た時は臭ってなかったんだけど、今は臭うよ」


人間が臭わないくらいの臭いも吉子は死神だから分かるんだろう。

で、その臭いってのは、俺の向かいの部屋。

浪人生の部屋から臭ってくるんだそうだ。


物怖じしない吉子が行って見てくるって行ったけど・・・なんかな〜。

嫌な感じがする。

で、とりあえず管理人と、それとやっぱり物怖じしない蜜柑さんにも

来てもらった。

明智さんが来ると、かき回すから今回は知らせなかった。


吉子も連れて四人で浪人生の部屋へ・・・。

まず管理人が浪人生に声をかけた。


ドン、ドン、ドン。


「横内さん・・・おはようございます・・・横内 さんいますか?」

「横内さん・・・」


しばらく待ったが返事がない。


「留守みたいですね」


管理人が言った。


「あるよ・・・肢体」


吉子がそう言った。


「私、死神だから分かるの・・・あるね、この部屋に・・・」


「無理くりドア開けてみるか」


蜜柑さんが言った。


霊感がすこぶる強い吉子がそのドアの前まで来て言った。


「わ〜ヤな感じ・・・」


とか言いながら、平気らしい・・・まあこっちは死神だからな。

俺がドアを開けてみるから・・・そう言って俺がドアを開けた。

そしたら俺でも分かるくらいのイヤ〜な空気が漂ってきた。


で、俺が先に入って、続いて吉子、あとは蜜柑さんと管理人さん。

部屋の中が薄暗かったので誰かが照明をつけた。


そしたら、そこに横内、浪人生がカーペットの上に仰向けに横たわっていた。


「浪人生・・・・死んでる?」


って蜜柑さんが倒れてる浪人生に声をかけた。

死んでたらとうぜん返事はない。


「こいつ、胸にナイフが刺さってるよ、死んでるみたいね」

「誰かに殺されたんだきっと・・・」


浪人生の近くまで行った蜜柑さんが状況を説明した。


極楽荘で殺人事件が起きた。


俺たち素人が肢体の前であれこれ言ったところでなにも分からないし解決も

しないから、警察に通報した。

しばたくして駐在がやってきた。

で、死んでる老人性を見て、すぐに県警に連絡して刑事やら鑑識がぞろぞろ

やってきた。


本格的に捜査が始まって俺たちも簡単な事情聴取や指紋を取られたりした。

要は俺たちも容疑者って訳だ。


浪人生、横内は誰に殺されたのか?

おれの横で吉子が言った。


「私、分かるよ」


「なにが分かるんだよ」


「私、死人と話ができるもん・・・浪人生さんが見えるし」


「うそお・・・見えるって?・・・浪人生が?」


「あ〜死神だからか?」

「浪人生いるのか?ここに」


「うん、警察がいっぱい来て部屋の中かき回してるから、今は廊下に出て

きてるよ、ほら」


って吉子が指差したけど、霊感のない俺には見えない訳で・・・。


「そこにいるのか?浪人生?」


「吉子ちゃん、浪人生の霊が見えるんだ・・・さすが死神」


横から口を挟んだのは蜜柑さんだった。

管理人は我関せずでいつの間にか管理人室に帰っていた。


「井戸川っち、あの浪人生さん誰かに強請ゆすられてたみたいね」

「そう言ってるよ」


強請ゆすられてたって?・・・誰に?」


つづく。


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