第27話  神への捧げ物のあたし

 そっかぁ!!

 あたしは、マルタの言葉で閃いた。あたしは、神への捧げものとして神殿に寄付されたんだ。

 莫大な財産持ちの、生きた人間だったから、扱いに困って大神官グラン・ルースト様の花嫁に修まってしまったのだわ。

 あたしは、この時に初めてとても信心深いイオナ伯母さんが、デイジー家の全財産を神殿に寄付したことの意味を悟った。


 伯母さんは、自分が難を逃れるためにしたのだ。

 実際は、あたしの加護の力が強かっただけのこと。

 それで、両親が巻き込まれた蒸気機関車の事故も、レイチェル叔母さんの家のガス爆発も巻き来れずにすんだのだ。


「どうしたの? 急に黙って」


「あたし……どう生きていくべきか、分かった気がします」


「はぁ? そんなこと、ここでお兄様の帰りを大人しく待ってることね」


「嫌です!! あたしはキャスパー様と一緒に生きていきます。神殿での行事は、何も知らないので教えてください!!」


 マルタは、信じられないというような顔であたしを見た。アイーダは、もうポカンと口を開けているだけだった。


「言っとくけど、お兄様は次席の大神官だから、新月ごとの夜遠しの祈り、月に二回の大祭の祈り、神が天上界へ帰って、人間界の平和を祈るっていうのもあるわ。それに、下っ端神官の片付けられない事務処理や、中央神殿や銀の森の光の神殿との会議にも出席してるのよ。あんたみたいな子供が出来る事じゃないのよ」


「分かってます。だから、神殿の端っこでいっしょにお祈りをしたいの。キャスパー様の邪魔はしませんから!!」


「それって、十分迷惑だし邪魔よね」


「タナトス・リーアの件があるんじゃない?」


 今まで、口を利かなかったアイーダが急に割り込んできた。


 大陸タナトスの名を冠した光の神殿のトップだという。


「彼女は、13歳からサントスで修行を始めて、そこまで上り詰めたわ。まだ、20代の半ばよ。彼女の言葉は、魔力を帯びていて伝道に行くとたくさんの人が集まったそうよ」


「アイーダ!! と一緒にしたら、タナトス・リーアに失礼よ」


これ? あたしのこと?


「彼女は、神に選ばれた人だと言うわ。お兄様に頼んでマリオンにも、何か位をあげたらいいんじゃない? マリオンも神殿に莫大な寄付をしてるのよ。とても善徳なのじゃないかしら?」


 アイーダが、提案してくれた。

 でも、ヘンリーさんの遺産を、全部神殿に寄付をしたのはイオナ伯母さんなんだけど……。

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