第26話  キャスパー様の双子の妹

「キャスパー様!! 酷いです。あたしは、誰とも口を利いてはいけないの?」


 愛されてる自覚はあるけど、キャスパー様がここまで焼きもち焼きなんて……驚きだわ。


なんて言ってませんよ。でも、可愛いあなたを他の人に盗られないかと不安なのです。分かって下さい。マリオン」


「でも……」


「あなたの話し相手として、サントスに留学してきている末の妹二人を呼ぶことにしました。マルタとアイーダと言います」


「キャスパー様……」


「年は、あなたより二歳年上ですが、性格はおとなしめです。良い話相手になるでしょう」


 キャスパー様は、あたしの毎日の退屈を知っていたのだ。

 でも、キャスパー様の妹さんて、あたしとの結婚を反対をしていたのではなかったかしら……?


 あたしは、ジッとキャスパー様を見つめた。


「そんな顔をしないで。ワタシのマリオン。男性といっしょにいて欲しくないだけですから。どうか、ワタシだけの人でいて下さい」


「だったら、マルコとは庭師として話すことにします」


「マルコのことがそんなに好きなのですか?」


 キャスパー様は、慌てた様子であたしを見てきた。


「そうじゃありません。マルコは、デイジー家からの知り合いです。年も近いから友達みたいに思ってるだけです」


 キャスパー様は大きく息を吐かれた。

 安堵の溜息なのかしら? 


「マルタとアイーダを、出来るだけ早くこの家に呼びましょう」


 そう言うと、キャスパー様は、あたしをお姫様抱っこして家の中に連れて行ってくれた。

 あたしって、愛されてるの? 子供扱いされてるの……?


 時々、キャスパー様の心が分からなくなる時がある。

 愛してもらえてるんだって信じられる。

 でもたまに、不安になるのよ。キャスパー様は、神殿のナンバーツーの方。たくさんの人のために、お祈りをしている立場だわ。



「あなた、そんな事も分からないでお兄様のお嫁さんを名乗ってるの」


 と言ったのは、翌日に家に来たキャスパー様の妹のマルタだった。

 金髪と青い瞳は、キャスパー様と一緒で、双子の妹のアイーダはほとんど喋らないのに、彼女は一人で喋っていた。


「だいたい、お兄様は好きな人を作れなかったのよ」


「どうしてですか?」


 あたしの方が年下なので敬語になってしまう。


「お兄様は、女の人にモテすぎてたから、一人に決められなかったのよ。

 それに、良い雰囲気になっても、親衛隊がとことん邪魔するし!」


「じゃあ、あたしは?」


「賢者様の代わりに、結婚することになったと聞いたわ。しかも名家の莫大な資産と共に寄付されてきたとか?」


 あたしの位置づけって、デイジー家の遺産の一部? ってこと?


「何にしろ、あなたは、神への捧げものなの。だから、お兄様の親衛隊も無下な事が出来なかったのよ。お兄様にとってもあなたは、初めて心行くまで愛せる人だったの。分かった?」








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