第23話  いきなり爆発!!

 賢者様に誓いの言葉を促されて、あたしは小さく囁く程度に、キャスパー様は、元気よくはっきりとしたお声で、「はい!! 生涯、マリオン・デイジーを幸せにします」なんて大声で答えたものだから、大ホールの外からは、女の人のヒステリックな泣き声や、「私だけのキャスパー様でいて~~!!」と叫ぶ声で、婚礼の儀式は何度も中断したのだった。


 あたしは、本当にこんなに人気のある大神官様を、独り占めして良いのかと思っていたけれど、キャスパー様は全然動じてない。やはり、次席大神官グレイス・ルーストになると、肝玉も座ってくるのかな?


 式も終盤に差し掛かった頃__

 大ホールの出入り口付近で大きな爆発音がした。


「「ドッカーーン!!」」


 ?? なんだろう??


 見れば、黒煙も見えた。火も出てるようだ。


 あたしは、爆発音とともにキャスパー様に庇われて、床に突っ伏した。

 爆風が、あたしたちのいたところにも飛んで来たのだ。

 無防備だった賢者様だが、さすがに傷の一つも負われていなかった。

 それよりも、いつもの優しいお顔が一変して、とっても怒っておられていた。


「僕の時代にこんな事が起こるなんて、言語道断です!! 今すぐにこの騒ぎの犯人を突き止めなさい!!」


賢者様の一言で、警備騎士たちが動き出した。いままで、婚礼の立ち会い人をやってくれていた、同じ賢者様とは思えなかった。


「大丈夫ですか? マリオン」


「はい、キャスパー様」


「二人はもう、新居の方に向かいなさい。キャスパー、あなたがここに居ない方が良いです」


 賢者様に言われて、キャスパー様は、あたしを抱き上げて大ホールの別の出口から外に出ることに成功した。

 そこは、前もって封鎖してあった場所なので誰もいなかった。


 神殿を出ると、馬車が横付けしてあった。キャスパー様は、あたしをお姫様抱っこしたまま、馬車に飛び乗った。


「少しだけ揺れるよ」


「何処に行くんですか」


「ワタシたちの新居ですよ。神殿のすぐ横に作りました。隣が、警備騎士棟です。あなたを害する者は近づけませんよ」


 馬車の中で、キャスパー様は、あたしに口づけてきた。

 何度も、何度も、それは続き、キャスパー様の口づけは、やがてもっと熱いものに変わって行き、舌が口の中に入って来たのだ。


 ____と、その時にキャスパー様の動きが止まった。


 キャスパー様……様子が変だ……。


「あの……どうしたんですか?」


「つい、このままあなたを抱いてしまおうかと……賢者様に見破られて怒られました……あなたはまだ16歳でしたね……「キスまで」だと釘を刺されてしまいましたよ」


 なんとキャスパー様は、賢者様と心話が出来るのだそうだ。

 笑って言われたが、キャスパー様はとても残念そうだった。

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