第22話  結婚式

 真夏のさ中、あたしと、キャスパー大神官グレイス・ルースト様の結婚式が行われた。

 あたしは、二度目だから地味で良いと思っていたのに、キャスパー様の妹さんたちが、「それでは。お兄様が可哀そう!!」と言って、どんどん式を派手にしてしまった。反対していたのではなかったのかしら?


 それを聞くと


「仕方がないじゃないの!! あなたを義姉と認めないと、お兄様が私たちと縁を切ると言うのよ!!」


 それで……顔が引きつって、涙を浮かべてあたしのドレスの用意をしてくれてるんだ……とてもド派手な……!! 

 

 腕輪は、ヘンリーさんからもらったもので良いと言ったわ。

 キャスパー大神官様もそれ以上の者は用意できないからと承知してくれた。


「あなた、ズルいわよ!! 莫大な遺産を貰ってるからって!! それで傾いたうちの子爵家を立て直す資金を援助する代わりにお兄様と結婚するんでしょ?」


 そう言ってきたのは、大神官グレイス・ルースト様の四番目の妹さんだった。

 知らない言葉が、また出てきたわ。子爵家……?


「子爵家って……何処の?」


「知ってるくせに!!」


 知らないわよ!! だけど金髪美人は、思い切りあたしを睨んだ。


「ヴィ―ナ!! アルヴィナ、その辺で。フィリシアも、ヴィアトリクスもリューデシアもあと双子のマルタとアイーダ、セリカとジェシカももう、大ホールの席についてるぞ」


「お兄様~~ 本当に私よりも年下のこんなチンチクリンと結婚するの?」


「言っただろ? ワタシもマリオンも神に捧げられた身なのです。そういう運命なのです」


 キャスパー様はニッコリと笑って、四番目である妹さんを追い払ってくれた。


「キャスパー様は、貴族出身なのですか?」


「親が……ということです。ワタシの家は代々女系家族なのですよ。長男に私が生まれてしまって、家族親戚一同が驚いたそうです。その証拠にその後に生まれたのは、みんな女の子でした。九人目の子を母が流産して、父はワタシを手元に置いておくことが怖くなったそうです。

 あなたと似てますね……だからきっと、ワタシたちは上手くやっていけるでしょう」


 キャスパー様は、この上なく上品に笑った。

 ああ……この人の何処か、上品めいていたのは育ちの良さだったのね。

 聞けば、ヴァーレン皇国の子爵家の生まれだと言う。

 家は代々、女性が継いでいて男性は家長になれないのだとか。



 ▽▲△



 あたしとキャスパー様の婚礼の儀式は、サントスの神殿大ホールで行われた。

 広い、ホール内に人は僅かだった。

 なんせ、莫大な遺産相続人とサントス一の人気を誇る大神官グレイス・ルースト様の結婚式では何が起きてもおかしくはなかった。


 あたしは、キャスパー様の親御さんが出て来て、お家の援助を頼んでいたことも知らなかったの……


 婚礼の立会人は、なんと賢者様!!

 そうね……神殿のナンバーツーの結婚式なら、もうトップしかいないわ……。

 賢者様が、古代レトア語で祝福の言葉を述べた時、それは起こった。

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