第21話  賢者様の言葉

 夏の盛りにあたしとキャスパー様の結婚式が決まった。

 それに伴い、ちょっとしたハプニングがあった。


 キャスパー大神官(グレイス・ルースト)は、広大な西域を仕切る大神殿の中で、女の子に大人気なものだから、親衛隊まであるのだ。

 その女の子たちが、あたしの『不幸を呼ぶ娘』との結婚の事を聞いて来て、大反対してきたのだ。

 それから、キャスパー大神官グレイス・ルースト様の妹さん達もしゃしゃり出てきた。

 自分たちより年下の義姉になるあたしのことが許せなかったらしくて、日替わりで、あたしのところにやって来て、結婚をやめろと言うので、キャスパー様が間に入ってくれて、窘めてくれた。

 それでも、嫌がらせや、呪いの手紙なんて送ってくる輩がいるものだから、女とは恐ろしい。


 妹さんの方は、キャスパー様から直々に説明して納得してもらったけど、親衛隊の方は、賢者様の耳にまで届いてしまった。


「しばらくは、賢者棟にいることを進めます」


 そう言ったのは、キャスパー大神官グレイス・ルースト様よりも若くて同じくらい美しい、金髪碧眼の賢者様だった。

 どうなってるの? このサントスの神殿は!? 賢者様と次席大神官様がが揃って、こんなに若くて美しい人たちなんですもの。


 賢者様とは、賢者の執務室で初めて会った。

 賢者様は、優しそうな笑顔で、あたしを見つめると言った。


「頼もしい、精霊に加護をされていますね。あんたの周りで起きた不幸は、マリオン……あなたが呼び寄せたものでは無く、起こるべきして起こった人災です。あなたの所為ではありません。ヘンリー・デイジー氏も、もう天寿でした。これからあなたは、自分の幸せのことを考えて下さい」


「でも、賢者様……これ」


 あたしは、養護施設棟に届いた、あたしを呪うと書かれた手紙の束を賢者様に渡した。

 賢者様は、その数の多さにビックリしたようだ。

 本来なら、賢者様があたしの花婿候補になっていたはず。

 でも賢者様は、結婚はしないと神に誓いを立ててあるとかで……(建前)


「僕のいる神殿で、この手紙はひどすぎます。必ず、犯人は捜します。マリオン、あなたは婚礼の日までここに居なさい」


 あたしの周りで起きた不幸は起こるべくして起きた人災で、あたしは、大きな力で守られていると……? 賢者様はそうおっしゃったわ。



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