第13話 身元がバレた!!
ヘンリーさんは二度と目を覚ましてくれなかった。
それからは、あたしは黒の喪服のドレスを着せられて、部屋から出ることが許されなかった。
どうしよう……あたしの所為? あたしが浮かれて、弱ってるヘンリーさんをお庭に誘ったから……ヘンリーさんは死んじゃったの?
どうしよう……叔母さんが言ってみたいに、あたしがいたからアルテア王国の城塞の中に、市民権を持ってたお父さんとお母さんが死んだのもあたしの所為だと言われていたっけ。
『不幸を呼ぶマリオン』そんな名で呼ばれてあたしは、叔母さんに引き取ってもらえなかったのよ。
デイジー家の不幸もあたしがもたらしたのかしら……?
ハリスさんが、あたしの部屋に入って来た。
「奥方様、あなたにはつらいお役目をさせました。旦那様の葬儀は、サントスの大神殿にて行われます。奥方様の再婚は世間には極秘ですので、奥方様は、こちらでお待ちください」
「あたしは、ヘンリーさんを見送っては駄目なの?」
つい、大きな声が出た。
「そう言うことでは……。デイジー夫人となれば怪しい輩も寄って来るでしょう。旦那様の葬儀は壮大なものになるでしょうから、お守りできるか心配なのです」
「そんなの構わない!! あたしもヘンリーさんをお見送りしたいわ」
必死に食い下がって、ハリスさんにヘンリーさんの葬儀への参加を認めてもらった。
でも、親族席ではなく、一般席で。
世間的に親族のいないヘンリーさんに、親族席に誰か座ってたら変なのですって。
あたしは、サントスに発つ日にヘンリーさんに最後のお別れを言った。
まるで、子供のように眠るヘンリーさんに「ありがとう」と涙ながらに。
▲▽▲
サントスの大神殿の大広間でヘンリーさんの葬儀が執り行われた。
あたしは、目立たないように、目深に帽子をかぶり一般席の真ん中の隅っこでひっそりと座っていたの。隣には、マルコがいてくれた。
そんなに、頼りなく見えたんだろうか? 後でマルコが言うには「いつ倒れてもおかしくないくらいフラフラしてた」らしいのね。
そんなあたしの目の前に、一人の女性が現われた 。
「上手いことやったね。マリオン」
俯いていたあたしは、顔を上げてビックリした。レイチェル叔母さんだ。
「レイチェル叔母さん……」
「フ……ン。わたしの占いも当たることがあるようだ。デイジー夫人になってるとは」
叔母さんは、あたしのダイヤモンドの付いた腕輪を見て気が付いたらしい。
そして素早く、あたしから腕輪を抜き取ると、
「お前のような小娘には、勿体ない代物だねぇ~ もらってあげよう」
と言って去っていってしまった。
あんまり突然のことに、あたしはポカンとした。
だが、隣にはマルコがいた。
「おい、マリオン!! お前、天涯孤独っていうのは嘘か? 叔母さんて
誰だよ? おい!! 旦那様を騙してあの屋敷に来たのか!!」
「ほとんど関わってこなかった叔母さんだもの……」
そう弁明したけれど、あたしはマルコに引っ張ってお屋敷まで戻された。
そうして、もう一度徹底的にあたしの調査がされた。
そこで、御者の人と叔母さんが不倫関係であることが分かり、二人で結託してあたしをヘンリーさんのもとに送り込んだことが分かったのだった。
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