第7話 14歳の花嫁、97歳の花婿
後の話は、トントン拍子で進んでいき、あたしはお屋敷から出してもらえることもなくなり、たくさんいるメイドさんたちには、同情の目を向けて来る人。嫉妬か何か知らないけど、「上手くやったわね! 身寄りのない孤児が!」って罵ってくる人もいたわ。
ハリスさんが追加の身辺調査をするって言ったのに、叔母さんたちのことはバレずにいたのかしらね。
あたしは、叔母さんとの約束を守って何も言わなかった。
春の麗らかな日に、ディナーレ市街のデイジー家にサントスの大神殿から神官が呼ばれて、ヘンリー様のお部屋で婚姻の儀式が行われることになった。
あたしは、白いドレスとリリエラ(高級な百合の花)のブーケを持たされて、軽い化粧を施されてヘンリ―様の部屋で待つように言われた。
「ずまんの~~ ごんなじいの花嫁とはの~~いやじゃろおがの~~」
よ~~く耳をすませば、聞き取れるんだ。
確かに、声も小さいし、歯が無いから空気が漏れちゃってるけど。
あれから、あたしはヘンリー様と色んな事を話したわ。
小さい時に蒸気機関車の事故で両親を失って、サントスの神殿で育ったこと。神殿が紹介してくれた花屋から、花を卸してもらってディナーレで、引き車を引いて花売りをしていたこと。
「どんな人が、かっでいったががの~~?」
「仕事帰りのお役人さんだったり、毎日食卓に飾りたいと言われる奥様や、恋人にあげるんだとリリエラを25本も買って行かれる方もいましたわ」
やがて、神官様が入って来た。
「旦那様、賢者様は東方に出張中とのことです。で、次席の大神官にお出で願いました」
入って来たのは、まだ20代に見える若い神官様。
「ちょ……」
「早く、光の神に婚姻の報告と誓いの儀式をしてくれ」
ハリスさんに促されて、大神官様は「コホン」と咳ばらいをしつつ
あたしに近付いてきた。
「君……大丈夫ですか? なんなら、力になりますけど……」
あたしには、
だから言ったの。
「大丈夫です。あたし」
あたしは、笑顔で言った。
でも、後になって思ったの。
あの時、冷静ではなかったなって。
それは、後になって気付くのだけど。
大神官様が婚礼の祝いの聖典を読み上げて、あたしは、ヘンリ―様の奥方になるという証にダイヤモンドが一周ついてる金の腕輪を貰ってしまった。
この世界、婚姻の証には男性が女性に、腕輪を送る風習があるの。
腕輪が豪華なほど、その人の財力を表している。
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