第6話 97歳のヘンリーさん
あたしは、このお館の主、ヘンリー・デイジーさんに会わせてもらえることになった。
執事のハリスさん(ハリス様と呼んだら怒られたの。御者さんがそう呼んでいたからなのに~)に案内をされて、屋敷の一番奥にある日当りの良い豪華な部屋に通された。
部屋の中で一番初めに目に入って来たものは、大きな天蓋付きのベッドでフカフカの羽根布団の中に、身体を埋めて誰かが寝ていた。
「旦那様、マリオンでございます」
「……」
声ではないような、しわがれた音が聞こえてきた。
「マリオン・ゼナ。こちらに来なさい」
ハリスさんに呼ばれた。とうとうご主人様のヘンリー様に会うのね。
あたしは、唾を飲み込んで一歩足を進めた。
豪華な天蓋付きのベッドに寝ていたのは、私が想像していたよりもずっと年を取ったおじいさんだったの。
叔母さんは、確かヴィスティン共和国の初代の元老院長だと言ってた。
良く知らないけど、あの時の初代の院長は、一番年長の人がなったのよ。
顔は、皺くちゃ、歯は全部抜けてしまって、目ももう見えてないのだそう。
「マリオン、失礼ですぞ。旦那様に対して」
「ええと、ハリスさん。あたしここで何をすれば良いの?」
「旦那様のご夫人になって頂く」
「は!?」
「もう少し、お前の身辺を調査してからだが、お前が本当に身寄りがないのなら、ご主人様の伴侶となってもらう。そのつもりでな」
「60代のご夫人に頼むんじゃないの!?」
「旦那様とも話したのだが、世間を知り尽くした強欲な女よりは、素直そうで身寄りがないお前の方が良いそうだ」
ハリスさんは、主のヘンリー様と相談してそう決めたらしい。
主のヘンリー様は、身体は弱ってるが、頭はしっかりしているそうだ。
何でも、執事のハリスさんを通して話すのは、歯が無くてヘンリー様の言葉を聞き取れるのが、ハリスさんだけだからだそうだ。
……で、あたしはヘンリー様に気に入られたらしいのよ。
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