第5話 デイジー家の執事さん
「おい!! こら!! この娘がご主人様のあれだというのか!?」
「はぁ……ハリス様、10の刻に言われた住所に迎えに行きましたところ、この少女が一人で立っていただけです」
あたしを迎え来た御者の人は、ハリス様と言われる60歳位のご老人に小さくなって答えている。
あたしが、ここに来たのはやっぱり何かの間違えだったのかしら?
「旦那様のお相手は、身寄りのない、淑やかで、聞き上手な、せめて60代の女性を連れてくるように命じたはずだがな!!」
淑やかで、聞き上手な60代の女性!? お婆ちゃん世代の人ね。
「でも仲介の者には、間違えなく金を渡してありますし」
「お前……また変な占い師に聞きに行ったのじゃないのか? それに前金で要求してくるなど怪しすぎるわ!!」
占い師……叔母さんのこと? 私をここへ連れてくることでお金が貰えたのね。あたしは、自分の運命を嘆いて俯いてしまった。
「ん~~ もう良い! お前は何という名前だ?」
「マリオン・ゼナ・サントスです」
「ゼナ・サントス……大神殿の別名だな。そうか、その名を持つというのは、養護施設育ちか。身寄りのないのは本当らしいな」
これは嘘になると思うんだけど。叔母さんと昨日約束させられたの。
「私たちのことは絶対にデイジー家には言うな」と言われていた。
あたしは頷いた。
「旦那様も、もう目が見えず寝たきりだ。お前のような小娘でも良いか……聞いてくる。それまで庭でも見ておれ」
そう言ってハリス様は、屋敷の中に入っていった。
古い作りだけど、頑丈そうで築百年は越えていそうだな。
奥には言って行くと、大きな西方様式の庭園があった。
シンメトリー・ガーデンと言うの? 左右が全く同じ作りになったお庭。
サントスの大神殿にも、あったけどここ程全く同じではないわ。
真ん中に人口の滝を流して、小高い丘を作ってある。季節が代わると葉の色がが割る木々が植えられて、だんだん丘を這うように低い色とりどりの花々が植えられていたわ。
ここだけ異空間ね。ずっと見ていられるもの。
「この庭が気に入ったかい?」
「はい!! 季節の花がこんなにあります。花屋にも無い花があるわ」
「西域で手に入る花は、だいたい植えたからな」
あたしは、ビックリして後ろを振り返った。
「よぉ!! 俺は、庭師のせがれのマルコだ。あんたが旦那様のお相手か?」
「旦那様って、ヘンリー・デイジーさんよね? まだここにいられるかは分からないけど、ハリス様にここでまってるように言われたの」
「ふ~~ん、でも可哀そうだね。あんたもさ。あんな偏屈じいさんの面倒を押し付けられるんだろう?」
え? え!!? 何??
「ねぇ……」
あたしが言葉を発しようとした時、マルコは、親らしき人に呼ばれて行ってしまった。
「あっ!! 待って!!」
やがてハリス様の使いのメイドさんが、あたしを迎えに来てくれた。
あたしは、この屋敷にいても良いことになったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます