第2話  不幸を呼ぶマリオン

「眉をひそめて……何を考えていましたか?」


 キャスパ-大神官様が、あたしの顔を覗き込んで言った。


「ワタシといるのが嫌なのですか?」


 あたしは、思い切り首を振る。

 そんな訳ない!! そんな訳有り得ない!!


「だって、あたしは『不幸を呼ぶマリオン』だと親戚中の人に嫌われてたのにキャスパー様は、どうしてそんなに、あたしに優しくしてくれるの?」


「さっきも話したように、親戚の方々はあなたを利用して甘い蜜を吸おうとしたのです。天罰が下ったのですよ」


「でも……」


「他にどんなことがありましたか? 話してみてください」


 キャスパー様は、あたしを抱き上げると、ベッドまで連れて行き座らせた。

 ハリスさんの持って来てくれた、暖かいミルクを手渡しながら言ってきた。


「両親が二歳の時に蒸気機関車の事故に巻き込まれたんです……両親は、東方の聖地に向かう途中で、お母さんのお腹にはあたしの兄弟もいたって聞きました」


「13年前の事故ですね。予見師が予見していながら、世間に知らせていなかったばっかりに、思ったよりも大きな大惨事になってしまった事故です」


 あたしはビックリした。


「あの事故は、予言されてたの?」


「機関車の事故があるということは……です。それが何時いつ起きて、何人の犠牲者を出すかまで分かりません。ただ……」


「ただ?」


 キャスパー様は、非常に残念な顔で言われた。


「東方の神殿が、予言の情報をもっと広く世間に開示していれば、気を付ける人もいたでしょう……ということです。普通の人の運命は変えられません。神でも、人間界に関わるのは極力ないのですから」


 あら、そうなのかしら? この世界の神様は、人界に降りて世直ししてたって、習った気がするけど??


「あなたは、どうして助かったのですか?」


「二歳の子に汽車での移動は、周囲の迷惑だと考えたそうです。あたしは、サントスの神殿の養護施設に一時預かりになり、それが、本格的な預かりになってしまったんです」


 ミルクが熱くて飲めなかったあたしから、カップを取り上げ、キャスパ―様は、「フゥ、フゥ」と息を吹きかけて冷ましてくれた。程よく冷めたところで、再びあたしに渡してくれた。あたしは、カップを受け取ると一気に飲み干した。


 そう……サントスの神殿の養護施設で、13歳まで育ったんだ。


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