二度目のセカンドライフは大神官様と

月杜円香

第1話  幸せ過ぎて幸せ!!

 ベッドの中で二人で同時に目が覚めた。

 あたし、あたし、こんなに愛されて良いのかな……。

 肩までの金髪が、枕に張り付いて、深い青い色の瞳が気だるげに開いてあたしを見ていた。


「あなたも、目が覚めたのですね? マリオン」


大神官グレイス・ルースト様も……」


「キャスパ-と呼んでください。もう夫婦ですよ」


 大神官グレイス・ルースト様は起き上がって、あたしの顔を手で包み「おはよう」のキスをしてくれた。

 初めてだ。生れて初めてこんな清々しい朝を迎えた気がする。


「キャスパ-様、奥方様。朝のお支度の時間です」


 執事のハリスさんが、部屋をノックしてきた。

 執事のハリスさんは、あたしとの結婚のために、雇ってくれた人であるがそれ以前からの知り合いだ。

 60代なのだが、年相応には見えない。


 本当に、二カ月前までは不幸を呼ぶ女だと親戚中から嫌われていた。

 ただ一人、あたしのことを理解してくれたヘンリーさんとも死に別れてあたしは、親戚のおじさんやおばさんの言いなりだったわ。


「フゥ」と息をつく。


 キャスパー様は、あたしの顔を包み込んで、何度も言い返すように言った。


「また、過去に囚われていますね? あなたは生きてるのです。まず、それに感謝しましょう、そして、あなたを生んでくれた父上や、母上にもです」


「でも、キャスパー様。あたしの所為で不幸になった人は確実にいます」


 あたしは俯きながら言った。


「あなたの話は聞いてますよ。でも、あなたの所為ではありません。あなたの周りの強欲な人たちが、罰を受けただけのことです」


「キャスパー様……」


「僕の言うことが信じられませんか?」


 キャスパー様は、あたしの顔を包んだまま顔を近付けてきた。

 そっと触れる、唇。

 昨日の濃厚なキスとは違って、とても心地が良い。


 でも、まだキスまでしかしてない。

 それはあたしが16歳だから。

 20歳になるまで待ってくれるんだって。

 でも、でも、本当に良いのかな……大神官様は西域で一番大きな神殿のナンバーツーで、今回あたしとの結婚のためにと、神殿の近くに小さいけれど豪華な家を建ててくれた。


「あなたの持参金を、使わせてもらっているので気にしないで下さい」


 キャスパー様は言う。


 その持参金は、確かイオナ伯母さんが神殿に寄付したものだと思うけど?

 神殿の方では、私の持参金として扱ってるのね……。

 額が、額だし……

 ヘンリーさんが、あたしに遺してくれた唯一の


 それは、巨大な富なんだけど、それよりも生きていて欲しかったな。


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