LIVE FOR THE BLUE

狭山梨羽子

第1話 蒼い閃光

 複雑に入り組んだ山脈に抱かれた国ーー蒼我国(そうがこく)。


 小さなその国で、大きな出来事が起ころうとしていた。


 正月から少し経ったこの日は、25年に1度、新しい神の子が降臨する日なのだ。


 6つの里と、1つの都。


 それぞれが伝統的な踊りや山車を使って、盛り上がっていた。


 この日ばかりは、どんなに無口な人でも、狂ったように騒ぐ。


 騒げば騒いだほうが、よい神子が降りてくると言われているからだ。


 夜も更けてくると、子供たちは寝かされ、たちだけで更にひどい大騒ぎをする。


 鋼の女との異名を持つ女王の凜亜も、目の前で繰り広げられる大騒ぎに、大口を開け、手を叩き喜んで爆笑していた。


「凛亜」


 顔を座布団にうずめて笑っていた凛亜に、夫の誠司が声をかけた。


「凛音(りんね)は寝ましたよ」


 母親の顔になる凛亜。


「わかったわ、少し、顔を見ていてもいいかしら」


 誠司は微笑んだ。


「僕も一緒に行きます」


「そう」


 20歳という若さで女王になった凜亜は即位してすぐに、10歳年上の誠司と結婚し、妊娠、出産した。


 娘の凛音は、まだ3ヶ月。


 出産後すぐに政治に関わろうとした凛亜を、誠司は止めなかった。


 凛音が寝ている部屋に行くと、乳母が付き添っていた。


「ありがとう、夜遅くまで」


 乳母は微笑んだ。


「とんでもないです。

 元気に育って……よく眠っています」


 小さな宝物の頬に、そっと触れ、誠司と見つめ合う。


 その時だった。


 蒼い閃光が国中を一瞬包んだ。


 誰かが、言った。


「9代目の、誕生だ……」

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