第22話 落ちこぼれのアドバンテージ

 俺は二手に分かれたのと同時にカナへと炎魔法を放つ。するとカナは余裕そうな顔で俺が放った炎魔法を相殺した。そのとき俺は、ちょっとしたデジャヴを感じた。そう。第一次試験、レイナと戦ったときの姿を、俺は思い出していた。そうとわかった瞬間、俺の額には少しの冷や汗が流れていた。なら。


「いくぜ。」


俺は炎魔法で爆発を起こし、その爆風を利用してカナに接近する。そして、俺が持っていたナイフで攻撃を仕掛ける。だがカナはそれでも余裕そうな表情をしていた。不思議に思った俺はナイフの先を見た。するとそのナイフはカナには届いておらず、なにかによって防がれていた。なんだこれは?そう思っていたが、カナから発せられたその言葉によって、その疑問は消えた。


「これはね、防御魔法って言うのよ。」


防御魔法。つまり、この魔法がある限り俺に勝ち目はないってことか。


「まあ、それでも俺はお前に勝つ自身がある。」


そうして、俺は赤いハチマキをどこからか取り出し、頭に巻き付けた。


「さあ、こっからが本番だぜ。」


そういったその直後。俺達の足元が水に覆われ始めた。


「なんだ、これは!?」


すると水はスパークを帯びる。やばい。そう思ったときにはもう遅く、その攻撃は俺に直撃するのだった。








 僕は風魔法を使ったことによって、なんとかその攻撃を避けていた。


「...!。」


ユイガがどうなっているのか気になったので、ふと横を見てみると、そこにはなんとか立ち上がっているユイガの姿があった。


「どこを見ているの?」


しまった。ユイガに気がとられていたせいか、レイナが近くに来た事に気づかなった。そしてレイナは僕の腹に手を置き、雷魔法を放つ。そのおかげで、僕は後方へと吹っ飛ばされる。だが、風魔法で勢いを殺し、さらに追い風を生成する。そしてその勢いに乗り、レイナに剣を振りかざす。


「いい動きになったわね。だけど。」


剣は回避され、それと同時に僕の手首をつかむ。


「まだまだ甘いわ。」


僕はまたもや後方へと吹っ飛ばされる。だけど今度は事前に風魔法を使うことによって、何とかその場に踏みとどまった。そのおかげで、レイナは目を見開き、隙ができた。その隙を狙い、僕は彼女を殴打する。だが、そのダメージは悉く治っていく。だが、これでいい。そして僕が殴打を続ける中、彼女は手をかざし、今度は水魔法を発動させる。


「僕にはそれは効かないっ!」


僕はその水を風魔法ではじき返した。


 






 あれから、10分たったくらいだろうか。彼女ははぁ、はぁ。と息を切らしていた。だがそれに反し僕は多少息を切らしている程度だった。そう。これが僕の作戦だった。


 僕の風魔法は、なぜか常人よりも魔力を消費しない特性を持っていた。それに気づいたのは、先生と戦たときだ。だからこそ、もしかしたら、このアドバンテージを駆使すればレイナたちにも勝てるんじゃないか?そう思った。そして結果、彼女は疲弊していた。だが、彼女はそれでも焦ってはいなかった。


「あなた、すごいわね。だけど、もうぼろぼろでしょう。」


その投げかけに僕は


「さあ、それはどうだろうか。」


と、はぐらかしておいた。すると彼女は自信の体に手を置いた。


「魔力がかなり失われるけど、仕方ないわね。」


その直後、僕の目は見開かれていた。久しぶりの絶望。それと同時に、なぜか高揚している自分がいた。そう、彼女の体は最初戦うときの状態に戻っていた。


「さあ、第二ラウンドを始めましょうか。」


その言葉に、僕は。


「そうだな。始めようか。」


と言っていた。

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