第2話人間を拾いました
...今日は雨の日である。
その中でも特に酷い日である。
我の直感はいつも正しい。
何故我は人間界に行かねばならないと感じているのだろう。仮に行ったら皆にお説教コース確定だ。
まぁ、良いか!濡れることくらい、よし行こう!
あ、でも何か置いてかないと皆心配するか。
『すまんが何か運命を感じたから出かけてくる、夜には帰ってくるつもりだ、それまで城を頼む』
よし!メモは残しといたから大丈夫だろう!
let's go人間界〜
「何をしてるんだ?お前」
こんな土砂降りの日に恐らく4,5歳であろう子供が1人橋下に座っていた。
『...?』
こんなとこにいたらいずれ川が増水して死んでしまう。この子の親は何をしているんだ?
「お前、親はどうした。近くにいるのか?」
『ぃ、ない』
なんとか絞り出した言葉は《いない》。
いや..!いろよ親!
魔物より化け物だろ人間!!!
「そうか、なぁお前。我が怖いか?」
子供は暫く黙っていた
やはり我が怖いのだろうか、まぁ我は魔王であるからな!にしてもどうしたものか。
孤児院にでも連れてくか?
暫く無言が続いたが子供は我の手を握ってふるふると首を振ったので我は子供の頬を摘んだ。きゅーとあぐれっしぶ。とはこう言う時に言うのであろう。
「お前身寄りが無いのだろう?我らのところに来るか?まぁ人間の敵であるから無いだろうが」
『ぃ、く!行、きたい」
意外だ。てっきり断られて泣き喚くかと思った。
よくよく見れば体は傷だらけだし、相当酷い扱いを受けたのだろう、かなり痛々しい見た目だし、こんなボロボロでヨレヨレな服を着ている。
...これは連れ帰るしか無いな!!!
魔界に連れ帰り、罵詈雑言を浴びせられた後
...すっごい怒られた。魔王様悲しいな。
今は子供をお風呂に入れている。
『ありがと、おにーさん』
風呂に入った事が無かったのだろう。シャワーやらシャンプーやらかなり嫌そうな顔をしていたが抵抗されなかったのでそのまま今は湯船に浸かっている。
「嗚呼、感謝するんだな。
...そうだお前、名前は無いのか?』
流石に人の子と呼ぶのはあまり気が乗らんからな!
「例えば我にはベイル・グラッジと言う名があるのだ。お前にも何かないのか?」
『...わかんない』
「そうか、なら我らが良い名を考えてやろう。
光栄に思えよ〜?」
と言いながら子供の頭を撫でていた。
「名前が無いんですか、この子。」
親は何してんだと溜め息をつくイロニアを他所に
「どちらにせよ、良い機会だ。正直言って人間に与えられた名があったとしても、捨てる気でいたから丁度良い」
と、するっととんでも発言するフォルテ
「名前が無いのは困るわよねぇ。せっかくなんだから良い名前をつけてあげたいわ」
「ね〜。名前ど〜しよっか?魔王様はもう候補あるみたいだし〜、皆でボード書いて見せ合いっこしようよ」
「それはナイスアイデアだアンニュイ。
さすが我に似て優秀だな」
「本当に誰に似たんでしょうねぇ。ま、良いでしょう皆さんこのボードにつけたい名前書いてください」
そう言ってイロニアは満面の笑みで我等にボードとペンを渡してくれた、何故か我だけぶん投げられたが。
「よ〜し、書き終わったよぉ〜」
やっと最後のアンニュイが描き終わった。
「じゃあ行くぞ、321」
イロニア ディライト
シンティランテ クレール
フォルテ フェリシテ
アンニュイ アミアブル
ベイル ラフィネ
「...なぁ、気になったんだがなぜお前ら可愛いらしい名前がピックアップされてるんだ?いや、可愛らしい名前があったとしても流石に我以外の全員はないだろ?」
「何言ってるの?可愛らしい名前つけるに決まってるじゃない、大きくなったら可哀想でしょう?」
「え、そうなのか?」
魔王が少し困惑しているとアンニュイが人間の子供にボードを見せてどれがいい?と聞いていた
「...賢いなぁ君は。その名前が良いんだ?」
その子供はこくりと頷いたので皆で子供が選んだボードを見ると、ベイルの考えた《ラフィネ》を選んでいた
「おぉ我の考えた名を選ぶか!お前、見る目あるぞ〜?じゃあ今日からお前の名前は
ラフィネ・グラッジだ!
「ねぇベイ。ふと思ったんだけどさぁ僕の名前ってどうやって決めたの?」
廊下を歩いていたら自然と抱きついてきたラフィネを受け止めながら、魔王は答えた。
「そうだな...皆で決めたぞ。
まぁ選ばれたのは我だったがな。」
今日も魔王に拾われた人間は幸せである
魔王様が人間を拾ってきました @sion6
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