魔王様が人間を拾ってきました

@sion6

第1話それはとある雨の日の事

「見事な豪雨ですねぇ魔王様。まるであの日の様だ」


「ほんとほんと〜。僕は良かったけど皆抑えるの大変だったんだよ〜?」


「あの子が無垢だったから良い物の...もうあんな真似しないで頂きたい。」


「そうよねぇ、あれは流石の私も許容し難かったわ。なn」


「いや、あれは本当にすまないと思っているのだぞ?ぅぐ、お前らぁそんな目で我を見ないでくれぇ、」


今、魔界の天気は豪雨である。ここ十数年で魔王軍では雨の日には必ず魔王様が煽られる光景を見る事ができるようになった


それは十数年前の豪雨の日の事。魔王城では


『すまんが何か運命を感じたから出かけてくる、夜には帰ってくるつもりだ、それまで城を頼む」


と、書き残したメモが机に置かれていた


「はぁ?何してるんですかあのクソボケ魔王」

「運命って...やっぱ魔王様変なとこあるよね〜」

「運命以前にこんな日に外に出るとは...あぁ、もう」

「魔王様...変な物拾ってきたりしないわよね?」


と机にへなへなと頭を抱える四天王陣の姿が見えた

そして魔王軍が心配しながらも仕事をこなし、四天王達は集まって夕食を食べ終わっていた。だが

本来魔王が座っているはずの席にはまだ誰も居なかった。


「まだ帰ってきてないんですか?あのクソボケ老人」

ダンっと机を叩いたのはイロニア。


「そろそろ夕ご飯だけど、早く帰って来ないかな〜」

頬杖をついて脚をぶらつかせるアンニュイ。


「遅すぎる...何をしているんだ?」

と、イラつきを隠せないフォルテ


「変な事に巻き込まれて無いと良いわねぇ」

と、普通に心配してそうなシンティランテ。


そんな四天王陣の怒りと心配のボルテージが限界を超えたくらいに、魔王が入ってきた。


「ぁ、ただいま皆。」

と、申し訳なさそうに魔王、

ベイル・グラッジが口を開いた時

「あんた帰るの遅いんですよボケたんですか?クソボケ魔王!」

イロニアはギロリとベイルを睨み

「流石に皆怒ってるの止めるのだるいんだよね〜、バカベイル〜」

アンニュイは笑顔を浮かべているが明らかに怒っている

「ほんと、何してたんだ?何も無かったなんて言ったらぶっ飛ばすぞ?」

フォルテは刀を取り出して

「無事に帰ってきたから良いけれど...皆心配したのよ?」

シンティランテだけは罵詈雑言は無かった。

精々魔王であるが聞き取れたのはそれくらいでその後は罵詈雑言が数分続いた。


「うぐ、皆に迷惑かけた事は詫びるけどさ、見よ!

これ人間の子供拾った!」

と、魔王はかなり痩せ細った子供を見せた。

それ人間の子供を認識した時、魔王、ベイル・グラッジはフォルテとイロニアによるダブルパンチをくらっていた。



そこからはもう大変。人間の子供を

風呂に入らせ

飯を食わせ

名付けをして

魔王がやっぱ人間界に戻した方が良いのかな、なんてほざいた時には魔王軍皆で追い回していた

子供には魔王がラフィネと名付けしかも自ら

代々魔王である苗字のグラッジという姓を与えた。

ラフィネは日々魔王軍と共に成長していった。

最初こそ人間と言う事で批判をくらっていたがラフィネの様子を見て

『こんな小さな同族の子供に人間は何してるんだ!」

という風に別方面で怒りが爆発し、ラフィネはかなり孫扱いされていた。



ガチャッと、扉が開いた方を見れば片手にクッキーをのせた皿を持ったラフィネが居た。


「ねぇ、皆何話してたの?」

キョトンと首を傾げながらラフィネは聞いてきた。


「ラフィネを拾ってきた時のことを思い出してただけですよ」


「そうなの?まぁなんでもいいけどさ、さっきクッキー焼いたの!...口に合うか分かんないけど食べる?」


「クッキー焼いたのか?是非頂きたい!」

さっきまでの陰鬱な顔とは裏腹にパァッと表情を明るくしたフォルテが食べたがっていた


「んふふ、そんなに食べたいの?じゃ、ここに置いとくから食べてもいいよ」


少し嬉しそうにしながらラフィネは机に焼きたてのクッキーを置いた。


クッキーを食べてみたが物凄い美味かった。

やっぱ天才かもしれん。

皆がクッキー美味しい!とそれぞれの言葉で感想を述べている中、魔王の声が響いた。


「なぁラフィネ...1つ聞いても良いか?」

少し不安そうな顔色で下を向きながらラフィネに話しかけていた。

なんだ?いつもThe 俺の孫★的な感じなのに。


「...っは。もしかしてクッキー不味かった?!」


最初少し黙っていたがラフィネがもしかしてと迷走を始めたのを他所目に、マジでベイルは何をしたいんだと四天王陣は困惑していた。


「いや、違う。なぁラフィネ、お前は魔族の敵だ。魔族と人の子ではそもそもの作りが違う。お前にとってはそれが当たり前だっただろう?でもやはりそれじゃあ行けないのかもしれない...だからお前を人間界に帰して普通の子の様に


ダンっと思いっきり机を叩く音が部屋に響く。

音が鳴った方を見れば少し不機嫌そうな表情のラフィネがいた。


「ねぇ、ベイ。俺の家族は魔族なの。ベイが拾って皆が育ててくれなかったら死んでるの。俺は人間に見捨てられた要らない子!そんなのが戻ったとしても良い扱い受けるわけないでしょ?それに...俺は皆の事が好きなの!種族とか関係無くさぁ。だから、だからさぁ捨てないで、ベイ。」


段々と涙声になっているのが分かりラフィネの方を見るととても痛々しい程に可憐で健気な顔が悲しげに歪んでいた。


「...ふは、はははは!そうか、好きになってしまったかぁ。ならもう返せないなぁ」


と、嬉しそうに魔王は笑っていた。


「ふざけた事言ってないでラフィネに謝りなさい、この馬鹿ベイル」

と、殺気を出しながら思いっきりベイルの足をイロニアが踏んでいた。


「ラフィネに必要ない心配させるな、大馬鹿者」

そうフォルテが言うとベイルの喉元に刀を当てていた。



こんな日常がずっと続けばいいなぁ。

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