第五十四話 俺の部屋で……(※微エロ注意)

「そう?じゃあお邪魔するわね」


俺が入室を許可すると、二人が入ってくる。星空もどこの鍵を閉め、先ほどの位置に座る。


「早速俺の今日の晩御飯、みせてくれ」


そう言って俺は二人が持っている包みを貰おうとする。すると、如月は手に持っている包みを俺に差し出してくる。


「はい!感謝しなさいよね!」

「部屋に入れたんだからあいこだろ?でもありがとう!」

「ふん!」


鼻を鳴らす如月を置いて、俺は元の定位置に座り、包みを開ける。


四角い黒いお弁当箱が二つ重なっており、上の箱にはハンバーグやいくつかの惣菜がぎゅうぎゅうに詰まっていた。


下の箱に入っていたのは黒胡麻がかかった白いご飯。


「おおー!美味しそうじゃないか!」

「当たり前でしょ!あんたと違って私達は自炊してるんだから!」

「へーすげー」


素直に驚く。


「後で食べるわ!サンキュー!」


俺は笑顔で感謝の言葉を述べ、お弁当を横にどけ、フルーツケーキを食べ始める。

部屋に入れるだけでお弁当やケーキをくれるなんて、君ら太っ腹だね。


立っていた二人は部屋を見回す。


「迷宮専門の学校に通っておいて迷宮探索の本が一冊もないとかあり得ないんだけど」

「ゲーム、漫画ばっか。あんた、本当に迷宮に興味ないのね」

「ない」


デジタル化が進んでいる現在においても紙の本の需要はある程度存在し、家に迷宮の専門誌を置く人間は多い。

だが、俺は一切興味がないので、当然持ってない。


「迷宮探索は金を稼ぐための仕事だ」

「あんた、あんだけ強いのに何でそんな夢のないこと言えんの?」

「それさっき私が言ったよ。興味がないんだって」


星空がショートケーキを食べながら言う。


「理解に苦しむわ」

「そうか」


俺もこの現代社会で命懸けの仕事をしたがる人間の気持ちは理解出来ない。

つまりはお互い様だ。


「こっちが読モまでやって迷宮の為のお金を稼いでるって言うのに……」


如月が苦々しげに俺を睨みながら呟いてる。


「読モやってたのって迷宮のためだったのか」

「当たり前じゃない。迷宮装備がいくら掛かると思ってるの」

「まあ高いな。俺のベビーメタルソードも10万DPもかかったし」

「10万もってあんた……。めちゃめちゃ安いじゃない」

「え、そうなの?」


10万DPの剣がめちゃめちゃ安いって。

どんだけ高い装備買うつもりだよ。


「あたしのメイン武器、700万も掛かったんだから」

「7、700万!?お前、どんだけ金持ってんだよ」

「5年も読モやってたら余裕で貯まるわよ」

「そうなのか……。すげーな」


俺は素直に感嘆する。

高一で700万貯めて武器買うってどんだけ迷宮に人生賭けているんだよ。


「……あれ?この前パワレベした時、持ってた武器、安い武器じゃなかった?」

「……そうよ」

「普段使いしないのか?」

「……しないんじゃなくて出来ないのよ」

「ふーん」


普段使いできないんだ。700万もかけたのにもったいないな。


そう思ってフルーツケーキを食べようとする。

すると、如月が大声を上げてくる。


「ちょっと!何でか聞きなさいよ!」

「え、いや別に興味ない」


俺には関係のないことだし。

そう言うと、文月がため息を吐く。


「はぁ、あんたって本当に他人に興味がないのね」

「ないな。知って何か俺に関係あるのか?」

「……」


俺に関係ないのに俺が知る必要はない。

だからどうでもいい。


「ワン君、ふーちゃんやななちゃんみたいな可愛い女の子が部屋に来てるっていうのに。本当に何も変わらないね」


目の前でショートケーキを食べ終わった星空が口を挟む。


「ふーちゃん?ななちゃん?誰?」

「その二人のことだよ!如月双葉と文月奈々美!」


俺の疑問に星空は大きな声で返答する。だが、俺はその答えに眉を顰める。


「あれ、星空達ってそんなに仲良かったっけ?」


屋上では喧嘩していたように思えるが、いつの間にあだ名で呼ぶようになったんだ。そう言えばさっきも星空を下の名前で呼んでたような。あれ、昨日もか。

まあ、あれももう一ヶ月近く前のことだし、三人とも過去の遺恨は忘れて仲良くなったんだな。


「うーん、二人の相談に乗ってあげてる感じかなー」


そう思ったのだが、星空は複雑な顔をして歯切れの悪い返事をする。


「そうなのか?初めて会った時、言い争いしてたような記憶があるけど、もう仲直りしたのかと思ったけど」


俺と星空がパーティーかどうかだったか。


「え、あー……そう言えばあの時のこと謝ってもらってないなー」

「謝って?ということは星空はあの時のこと、怒ってるのか」


三人で言い争ってたしまあ怒ってるか。


「謝ってって!恵が先に私達につっかかってきたんでしょ!」

「そうよ!私達が先に小鳥遊に用があったのに」

「えー、でもワン君、嫌がってたでしょ」

「うっ……それは、そうだけど……」


星空の言葉に二人が言い淀む。そうか、星空はまだ二人に対して思うところがあるということか。ならば仕方ない。


「如月、文月、悪いが今日はもう帰ってくれ」

「え、急に何でよ!?」

「いや、仲良くない人間をこんなところで同じ部屋に置くのは良くないだろ。星空とはまだ話すことがあるし、俺の友達だ。悪いが二人は出て行ってくれ」


驚く二人に俺は冷静に理由を話す。ここがFクラスの教室とかならば出ていくのは星空だし、公共の場なら俺たち二人が離れる。


だが、ここは俺の部屋。


出入りする人間を選ぶ権利は俺にある。


「ちょっと待ちなさいよ!お弁当あげたでしょ!」

「ああ。それはありがとう。後で美味しくいただくよ」


部屋に入れる対価としてお弁当を貰ったのだ。いつまでもいていいとは言ってない。


「まあまあワン君。私も怒ってるわけじゃないし二人も話したいことがあってきたんだからそんな邪険に扱わなくても……」

「邪険にはしてないぞ。星空に思うところがあるんだろ?なら一緒の部屋にいるのは気分良くないだろ?」

「ワン君がそんな気を使えるところに驚いているんだけど……」

「嫌いな人間と同じ部屋にはいたくないだろ」


普通のことを言っていると思うけど何でそんなに驚くんだ。俺も金剛と同じ部屋には居たくない。星空の気持ちはよくわかる。


「嫌いってわけじゃないよ!」

「そうなのか?じゃあ二人が謝ればそれで解決か?」

「ええ!いやいいよ。私も強く言っちゃったし……」

「そうだっけ?まあ星空が気にしないのならそれでいいけど」


なんか煮え切らない感じだが、星空がいいのなら俺は別に気にしない。だが、星空は少し考えた後、二人をじっくりと見渡して意地悪そうな笑みを浮かべた。


「な、何よその気味の悪い笑みは……」

「いやー、やっぱり私、二人のこと許せないなー」

「は!?いきなり何言ってるのよ!」


唐突な星空の手のひら返しに、二人が焦ったように声を張り上げる。

俺も眉を顰めるが、まあ許せないのならしょうがない。


「そうなのか。じゃあ……」

「でもー、二人のおっぱい!触らせてくれたら許せちゃうかも!」

「「は?」」


二人が口を開けて驚く。それを眺めながら俺はフルーツケーキを頬張り言う。


「まあそれで、モゴモゴ……、星空が許すのならいいんじゃないか?ゴクン」

「は?いい訳ないでしょ!あり得ないんだけど!」

「そうよ!」

「そうなのか。じゃあ出て行ってくれ」


星空とは少し今後について話すこともあるしな。

仲良くするつもりがないのなら二人は出て行ってもらおう。


「まあまあ。今後も二人とはお話しする機会もあるだろうし、今ここで!過去の遺恨をなくしておくのもいいと思うんだよねー!」

「そうか。好きにすればいい」


星空の交友関係に口を出す気はない。

三人が仲良くしようがしまいが俺には関係のないことだからな。


「あ、あんたねー!何で星空に許されるためにおっぱい触られないといけないのよ!」

「そうよ!セクハラよ!」

「じゃあ私は二人を許せないかなー。これからも私は二人と仲良くしたいんだけどなー」

「だそうだ。どっちか早く決めてくれ。話が進まない」

「ぐっ……」


二人が苦々しげな顔をし、星空はニヤニヤと意地悪な顔をしている。


二人はチラチラとお互いを見てどうするか迷っている。


だが、意を決したのか、二人は胸を突き出して叫ぶ。


「い、いいわよ!触りなさいよ!」

「けどちゃんと約束しなさいよ!それと……」


如月がそこまで言って俺の方をチラチラ見る。それと、何だ。何で俺の方を見る。


「うんうん。過去の遺恨は今日でおしまい!約束!」


そう言うと星空はぴょんと立ち上がる。そして、手をわきわきさせながら二人に近づいていく。

それに恐れをなしたのか、二人が一歩後ずさる。


「あ、あんた……他人の触るくらいなら自分の触ればいいじゃない!」

「いやー、揉めるほどないもので」


星空の言う通り、星空の胸は小さい。正確には直接見ないとわからないが、星空の小さな手でも十分覆えるほどの大きさだろう。


逆にこの二人の胸は男の俺の手でも余るほどの大きさだ。


「じゃーあー、早速、ふーちゃんのおっぱいをー触りまーす!」


そう言って星空は文月の後ろに周りその制服の下から手を入れる。


「ちょっと!制服の下から手を入れていいなんて、あん!」


星空に胸を直接触られ文月が喘いでいる。


「うわー柔らかーい!」

「ちょっと、あん!やめ、んっ!」


文月の喘ぎ声を聞きながら、俺はフルーツケーキを食べるのを再開する。


「肌もスベスベー!」

「当たり前でしょ!ちょっとそこはちくっ!あん!」


文月が喘ぎながら星空に何か抗議した様だ。俺は気にせず、スプーン一杯にフルーツケーキをすくい、頬張る。

キウイフルーツやイチゴなどが贅沢に敷き詰められたケーキで、一口ごとに味が違うのがまた美味しい。


「そ、そこやめなさいって!」

「まだまだー!」


フルーツも新鮮で瑞々しく、一日置いていたらこの味は出なかっただろう。今日食べておいてよかった。


「ちょ、も、もう終わり!もう終わり!」

「はーい!」


文月の言葉に星空がおとなしく制服から手を出し離れる。

すると、今度は如月の方に向き直り、手をワキワキとさせながら近寄っていく。

文月は着崩れた服を直すでもなく、肩で荒い息をしていた。

それを見た如月が更に二歩離れていくが、同じ様に二歩星空が前に進む。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「待たなーい!」


そう言うと星空はばっと飛び跳ねて如月を抱きしめ、制服の下から手を入れ始める。

如月は星空から離れようとするが、ステータス差もあり、抱きしめた星空を剥がせないでいた。


「ひゃん!ちょっとブラ外すな!小鳥遊が見てるでしょ!」

「大丈夫大丈夫!今ワン君、お弁当箱開けてるから」

「はぁ!?ちょっと!あん!」


星空の言う通り、俺は先ほど貰った弁当箱の中身をまた開けていた。ケーキは一つ一つが中々の大きさだったが、育ち盛りの高一男子としては正直物足りない。

まだ十八時前だが、中途半端に食べたせいか小腹が空いている。


「ちょっ!どんだけ食い意地が張ってるの!やんっ!」

「えへへ!ふーちゃんのおっぱいはちょっと硬めだね」

「感想とかいいから早く離れなさい!」


星空が如月の胸を鷲掴みにしながら感想を述べ、如月は顔を真っ赤にしながら怒っている。


食い意地が張っているわけではない。ただちょっと小腹が空いて食欲が満たされていないだけだ。


俺は弁当箱の中身と量を再度確認し、迷う。今少し食べてしまおうか。いや、流石にケーキを食べたすぐ後はよくないか。美味しそうなお弁当なのだから、もう少しお腹を空かせてから食べよう。


「ふーちゃんもお肌スベスベだねー。髪の毛もいいにおーい!」

「か、嗅ぐなっての!気持ち悪い!あんっ!」

「ふっふっふー、そんなこと言ってー、感じてるんじゃないのー?」

「んな訳ないでしょ!あんっ!離れなさいってば!んっ!」


星空が如月の首筋に顔を押し付け、如月は何とか星空の魔の手から逃れようとしている。

しかし、星空は足まで絡めて如月を抱きしめ、如月は逃れられない。


星空。匂いを嗅ぐのは流石にどうかと思うぞ。

俺はそう思いながら一つ気になった事があるので、お弁当をしまいながら、いまだに顔を赤くし熱を帯びた視線で二人の様子を見ている文月に声をかける。


「文月」

「な、なによ……」

「この弁当箱って洗って返せばいいのか?返すのはどうすればいい?」


お弁当箱は使い捨ての容器ではないため、捨てるわけにもいかない。洗って返すにも俺が女子寮に行くのは流石に憚られるだろう。


「あ、洗って乾かしてくれればいいわ。明日も来るから」

「明日も来るのか?お弁当は?」

「も、持ってくるわよ……」

「おおー、なら歓迎だ」


明日も二人は夕食を作ってくれるらしい。そんなに俺の部屋が好きなのか。何もないけどゆっくりして行ってくれ。


「もう終わり!もう終わり!」

「はーい!」


如月が叫ぶと、星空が元気な返事をしながら離れていく。

星空が離れると同時に如月は床にペタンとへたり込み、胸を両手で抱きしめて荒い息を吐いている。


そんな如月に俺は声をかける。


「如月」

「な、何よ!まさかあんた……」

「明日もお弁当作ってくれるんだってな。まじありがとう」

「え……別に……」


俺が笑顔で感謝の言葉を述べると如月は胸を抑えたままそっぽを向いてしまった。


あれ、嫌がられたか。まあ来なかったら来なかったでしょうがない。学食に行くだけだ。


「ワン君、ちょっと目を瞑ってて」

「何で?」

「ふーちゃんがブラ戻すから」

「ああ、分かった」


俺は素直に目を瞑る。前でゴソゴソと絹切れの音がして、バチっという音が微かに聞こえてくる。


「もういいよ!」


星空の声を聞いて、俺は目を開ける。


目を開けると、俺の方を恨めしげな視線で睨む如月がいた。


「何だ?」

「何でもない!」


視線に気付いた俺がどうしたのか聞いてみるが、如月は何故か怒鳴ってくる。何で俺が怒られてるんだ。ケーキ食べてただけなのに。


「恵、ここまでしたんだからちゃんと約束守りなさいよ?」

「分かってる分かってる!二人がちゃんと約束守ってくれれば私も約束守るよ!」

「そう。ならいいわ」


どうやら如月と文月はどうしても星空と仲良くしたいらしい。ここまでするなんて見上げた根性だ。


「じゃあ、私達はもう帰るわ」

「そ、そうね……」


文月の言葉に如月が頷き、震えながら立ち上がる。


「帰るのか?てっきりまだここにいたいから胸を揉まれるのを我慢していると思ったんだが……」

「そんなわけないじゃない!あんたってほんと鈍感」

「酷くない?」


何で俺が罵倒されてるのだ。

星空も満足げに伸びをして俺に背を向ける。


「じゃあ私も今日は帰ろうかな!気力も充填できたし」

「あんたのせいで私達は気力ゼロよ」

「あはははは!まあまあ今度一緒にパーティー組も!それで許して!」

「そ、そう……それなら許すわ」


許すんだ。

確かにAクラストップクラスの魔法使いの星空がいれば二人の低いステータスでもそこそこの階層までいけるだろうな。


星空にはまだ聞きたい事があったのだが、明日以降でも別に構わないだろう。


「じゃあ今日はこんなところでー、ばいばーい」


そう言って星空達は部屋を出て行った。




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この話は微エロと言っていいのだろうか?

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