足の爪を切るとき深爪にさせる女

「はぁー。すっきりしたー。」

 私は一日の疲れをお風呂で洗い流し、寝室でリラックスしていた。


「爪、伸びてきちゃったなあ。」

 前回爪を切ってから、時間が経って伸びてしまった足の爪が、ふと私の目に入る。

 化粧ポーチから爪切りを取り出し、ティッシュを一枚床に敷いて、足の爪を切り始める。


 パチン、パチン。

 …。……。……………。

 パチッ。


「いっっ!」

 爪を切っているときにいつの間にか考え事をしてしまい、深爪してしまった。血が出るほど切れてはいないけど、ヒリヒリとした小さな痛みが治まらない。


「うぅ。」

 集中力を切らしてしまったことを反省し、気を取り直して足の爪切りを再開する。


 パチン、パチン。

 …。……。……………。

 パチッ。


「うっっっ!」

 二度目の深爪。さっき深爪した爪から隣の爪に移ったばかりなのに、また考え事をしてしまっていた。


「フフフ♪」

「…っ!だれ?」

 爪切りを持っている手が少し震えるくらいの痛みを感じながら、どこからか聞こえてくる笑い声に問いかける。


「痛そう痛そう♪深爪になって痛がってるあなたの姿、最高にステキ♪」

 全身裸の不気味な何かが、深爪になったばかりの私の足の爪を見て嘲笑ってくる。


「なんでこんな…。もうやめて…。いたいよ…。」

 深爪の痛みを抑えながら不気味な何かに必死に訴えるけど、聞き入れてくれる様子はない。


「もっと深爪になって、痛そうにしているところを見せてちょうだい♪」



 妖怪記録、『足の爪を切るとき深爪にさせる女』。

 足の爪を切っているときに、なにか考え事をさせて集中力を切らし、深爪にさせて痛がっているところを楽しむ悪趣味な妖怪。

 もし、あなたも足の爪を切っているときに考え事をしてしまったら、それは『足の爪を切るとき深爪にさせる女』の仕業かもしれません。

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