輪廻転生
@fin442
第1話
生前の俺はいたって普通の学生だった。
友達とバカやって笑って、学校もそれなりに熟してそれなりに平和に過ごしていた。
まぁ、善行も積んだ覚えは無いけど、悪い事もあまりした覚えもない。
……死因に関しては、たぶん事故だったと思う。
目が覚める前に覚えているのが学校からの帰り道を1人で歩いていた事と、後ろから何かがぶつかったときの感触くらいだ。
……目が覚めた時、俺は赤子になっていた。
手がふっくらしていたし、体も碌に動かせなかった。
見渡せた範囲の装飾を見る限り、現代ではなさそうだった。
その時はまだそこまで不安はしていなかった。
まだ見ぬ異世界パワーや自分の境遇にわくわくしていたと思う。
……人生はそんなに甘くないことは知っていたはずなのにな…
再び眠ろうとしたとき、悲鳴が聞こえた。
ドタドタという騒がしい足音と何かが割れる音。
激しい怒号と剣戟の音。
足音が近づいてきたときに、誰かの叫び声が聞こえた。
『------!----------!!』
『---!!』
何かが振るわれる音と女性の悲鳴が聞こえた後、乱暴に扉が開かれた。
『--------。-----!!』
入ってきたのは血まみれの男が3人。
髭面が何かを言った後、他二人が頷いたから奴が一番偉いみたいだ。
そして、何を言っているのか分からなかった。
だが、こいつらがこの家を襲っているのは理解した。
そして、この部屋の外で起こった事はおそらく……
『------。---?』
髭面は俺に気が付くと無造作に俺の首根っこを掴んで持ち上げた。
俺は泣くでも無く、その面を睨みつけ、そして唾を吐きかけた。
男は一瞬キョトンとした後、哄笑を始めた。
ひとしきり笑った後、俺の顔面に頭突きをしやがった。
痛みで目の前がにじむし、鼻は折れたのかドクドクと熱を持ってた。
それでも俺は声を出さずに、男を睨みつけ続けた。
……それが俺の出来る精一杯の抵抗だったから……
男は俺の様を鼻で笑った後、周囲の男たちに叫ぶ。
そして俺は、そのまま男たちに連れ去られた。
生みの親の顔を見ることなく、今生の別れを迎える事となったんだ…
そうか…
もう、あれから12年が経ったのか…
あの日から、俺はロクでもない生活を送っている。
その間の事なんざ詳しく思い出す必要も無いだろう。
俺を攫ったのは山賊で、「生活を共にした」なんて表現が甘い程こき使われている事。
そして…
「カーイー…。また手を抜いたそうじゃねぇか、えぇ?」
窓もなく、蝋燭の灯りのみが点いている暗い部屋で山賊の一人であるカルマールが下卑た笑いを浮かべながら俺を壁に押し付けている。
俺がその顔を睨みつけていると、そのまま俺の腹を殴りつけやがった。
「ぐッ……」
「あれは商品だってのは知ってるよぁ?価値が下がったらどうすんだよクソガキ」
知っているよ。あれが盗品だってこともな。
俺が何かを言う暇を与えずに2発目が飛んできて、俺はたまらずに床に転がった。
「次やったらこれだけじゃ済まさねぇからな。しっかりやれよ」
カルマールはそれだけ言うと、俺に一瞥をくれることもなく部屋から出て行った。
「…はぁ……はぁ……くそったれが……」
俺は悪態をつき、壁にもたれながら体を起こした。
『落ちこぼれのカイ』
それが俺の第二の人生の名前だった。
輪廻転生 @fin442
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