【詩】雨の街を ただ宛もなく揺れて二人

菊池昭仁

【詩】雨の街を ただ宛もなく揺れて二人

 カウンターに並んで座り あなたはいつものように 少し顔を傾け オイルライターでタバコに火を点ける


 好きよ ZIPPOライターとマルボロの匂い そしてあなたの横顔



 「私にも1本ちょうだい」



 あなたは黙ってタバコを差し出し 火を点けてくれた



 お酒はあなたと同じ ライムソーダ


 あなたはウオッカにライムを絞る ほとばしる鮮烈なライムの香り


 

 店を出て 繋ぐ手と手のぬくもり 


 雨の街を歩いてゆく 私とあなた



 この道が正しいのかなんてわからない


 私たちは傘も差さず ただ濡れて歩くだけ

 

 

 水溜まりに雨が落ちる 広がっては消える 幾つもの同心円たち


 私たちは立ち止まり それをじっと見ていた



 「俺たちみたいだな?」



 それぞれの家路を急ぐでもなく 私たちは雨に濡れていた



 この世に絶対など存在しない すべては夢 幻なのだ


 だからこそ この時を大切に労りたいの あなたとの今を



 私のすべてがあなたのすべて


 あなたのすべてが私のすべて



 何もいらない あなたがいれば



 梅雨が明ければ灼熱の夏


 焼けた砂 熱い口づけ



 私はあなたの愛で焼かれたい


 独りぼっちの秋が来る前に


 

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【詩】雨の街を ただ宛もなく揺れて二人 菊池昭仁 @landfall0810

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