第7話 魔法少女の最後の戦い!そして、早すぎるお別れ

「ふっ、今回も決まった……」

 戦いの前には、格好よく変身して、決めポーズ。きめ台詞も言えば、準備は万端です。

 「一気に行くよ!」

 レインからもらった扇子、ウィンダリアを振り上げて、いくつも突風を巻き起こしますが、ダクナーには涼風ほどにも効いていません。

 「ダメか……! それなら!」

 ぐっと羽ばたいて飛び上がり、速度と体重を乗せて、勢いよく二足歩行するダクナーのすねを何度も蹴り続けますが、その硬さに、むしろ私の足が壊れそうで。

 「こんの……んんっ!」

 こぼれそうになった悪口を、咳払いでかき消しながら、あの手この手で攻撃は繰り返すも、全部無駄に終わってしまったのです。それどころか、ダクナーは私の動きを学んだでしょうか。足をつかまれて、アスファルトに叩きつけられてしまったのです。

 「rrrrrrrrrOOOOOO!」

 ダクナ―は、勝ち誇るように雄たけびを上げて。

 「きゅう……」

 全身の骨がきしむような痛み。指先の一本も動かせず、暴れるダクナーを見つめることしかできなくて。こみあげてきた吐しゃ物には、わずかに血が混じっていました。

 どうしよう、これ以上、できることが思いつかない。さっきまで、ぎりぎりはっきりしていた視界も、少しずつ曇ってきたような。

 そんなとき、声が聞こえてきたのです。

 風に乗ってきた、いろんな人の、不安の声。けれど、そこに混じる、魔法少女への、応援と期待の声。

 これまで助けてきた人々からの声です。しかも、それだけではありません。街に住む、動物たちの声。

 「ふふふっ……ダクナー、あなたの失敗は、私を一発で仕留めなかったことです!」

 口元の血を拭い取り、再び立ち上がって、ウィンダリアを構えました。

 「たった数か月。されど数か月! 魔法の何たるかは、理解してきているのですよ!」

 魔法の本質は、人々のプラスのエネルギーと、自然の力そのもの。

 その流れを理化し、汲み取ることができたのなら!

 「そして今、レインの言っていたことの意味に気づいたんだ。……それにしても、使い魔だからって、扱いがひどいと思うんだよね」

 ダクナーの攻撃を避けながら、こぼした言葉を聞いて、レインが飛んできました。

 「僕の最後の仕事があってこその使い魔ですから。ラゥナ。やっちまってください!」

 レインは最後にそういって、光の粒となって。そのすべてがウィンダリアに流れ込んでいきました。

 「終わらせる前には、準備から!」

 ウィンダリアが起こした風でダクナーを取り囲み、動けなくしてから、一気に空高くまで舞い上がって。

 「一発で、埋まってねー!」

 初めて変身したあのとき以上の速さと勢いで、思いっきり蹴り埋めて。

 「短すぎる時間だったけど……たくさん助けてくれて、ありがとう。レイン!」

 あの日、飛んできたがれきから、レインは私を助けてくれました。学校の勉強も、魔法の勉強も、わからないところを教えてくれたり、どこかで誰かが助けを求めていたりするのも、知らせてくれたのです。

 そして今、ウィンダリアから、彼の記憶の断片が、流れ込んできたのです。

 小さいころ、すっかり忘れていたあの出来事を。たった一度だけ、ダクナーに襲われた私を助けてくれたのは、レインだったのです。魔法で作られた彼は、どんな姿にもなることができるのでした。

 「ウィンダリア……クロー……レイン!」

 ダクナーを蹴り、わずかについた傷に向けて、何発も、何十発も風の詰めを打ち込むと、その傷はどんどん大きくなって。

 そして、見えたのは、取り込まれたあの人の姿があったのです。

 「今、助けます!」

 その腕を、引っ張り出したのでした。

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魔法少女 ラゥナ 鈴音 @mesolem

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