第6話 決戦の気配 最後の試練

 夏。どこまでも広がるような青い空を、痛いほどの日差しが照らす、少し息苦しいある日のことでした。この頃、少しずつ分かるようになってきた、ダクナ―が現れる気配を感じ取った私は、妙な違和感にさいなまれていたのです。

 なんだか、空気がよどんでいるような、胸が詰まるような感じがして。きっと、今回のダクナーは、これまでと何かが違う。そんな気がしたのです。

 でも、その日は何も起きないままに過ぎて行って。気づけば、四日も経っていました。

 その間、街では事件が頻発したり、喧嘩が絶えなくなったり。動物たちの様子も、おかしくなっていました。

 「……うつは、さきに言っておきます。あなたはきっと、今までの魔法少女の誰よりも早く、魔法使いになるでしょう。けれど、それ相応の試練もまた、やってくるはずです」

 レインも、こんなことを言い出して。縁起でもないからやめてほしいなあと思っても、レインの真剣な口ぶりを前に、そんなことは言えなかったのです。

 もやもやとした気持ちは、のどにつっかえたまま。考え事しながら歩いていると、目の前で、突然人が倒れてしまいました。

 「大丈夫ですか!」

 慌てて駆け寄って声をかけたのですが、反応はなくて。すぐに救急車を。そう思った瞬間。

 「AAAAAAAAAAArrrrrrA!!」

 空いっぱいに、黒い雲が渦巻いて、うずくまるその人を包み込んでしまったのです。

 みるみるうちに、黒いもやは膨らんでいって、いつものダクナーの、何倍も巨大になったのです。

 でも、こんなこと、起きるはずがない。ダクナーは決して、人は襲わないはず。そう、教わったのに。

 目の前のダクナーは、まだまだ大きくなっていきます。止めなきゃ。そう思った私の頭に、一羽のスズメが止まりました。

 「今回のダクナーはいつもと事情が違う。けれど、やることは変わらない。

 あれは、間違っても、私のミスでもなけりゃ、あんたの責任でもないさね。さ、行きな。魔法少女ラゥナ!」

 ぽふっと音と煙をあげて消えたスズメの下にある、レインの羽飾りに、願いを込めて。

 「舞い上がれ、私の思い。遠い空のどこまでも!」

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