第5話 魔導士《メイガス》
空が濁っていた。
そのようにすこぶる悪い視界の中でも、それは遠目からでもはっきりと見えた。
その様相は、緩やかに荘厳に螺旋を描く
それは街であった。名を魔導要塞都市アルダート。
雨が手をすり抜けるため、ひさしを作る意味は皆無。何となく人間臭い行動とは何だろうと考えた結果、意味もなく手でひさしを作っただけのこと。
「あれがアンリの住んでる街?」
「いや、似てはいるが別モンだ」
背の方を向きながら問えば、ぶっきらぼうな声が帰ってくる。
生気が抜けたような白髪、紅玉のような瞳、褐色の肌。
アンリーネ・グランデリア。ただし、透と交戦する前より幾らか成長した姿であり、黒色だったはずの髪と瞳は
黒髪ベリーショートだったはずが、目が覚めれば白髪ロングとなっていた。
その現実にアンリーネ・グランデリアは大いに困惑した。今もうざったそうに髪を肩から後ろへ流している。
彼女も透の異能『万物透過』の効果で雨をすり抜け、雨粒によって起こる微風のみを浴びていた。
「ていうかこの雨何サ」
「知らねえ。黒い雨が降る
「ここ外だヨ?」
「ならもっと分からなくなったな。ンな奇妙なとこ、噂にも聞いたことがねえ。そもそもオレも
そのため歪んだ空間である
アンリーネもまた、
ちなみにここまで全てが透の推論である。彼の
「ならあの街に行っテ、状況把握に努めよウ」
「そーだな。お前飛翔魔法は使えンのか?」
「当たり前だロ。何なら魔法を使わずに飛べる」
「はぁ?」
マナを肉体に装填。存在質量、『存在しようとする力』が一時的に増幅され、透は一歩空中に踏み出した。そのまま階段があるかのように歩を踏み締め、10メートルほどの地点からアンリーネを見ろした。
「ほらネ?」
「これだから異世界人は……」
なんてことはない。マナとは即ちそこに在ろうとする力。であれば、空中に存在しようとする
空中に存在しようとする作用が発生し、空中歩行などいとも容易く為されるのだ。
見れば、透の足元に霊力特有の青白い光が纏わり付いていた。
「アンリもやってみナ?
「こちとら
険しい顔で
口調の胡散臭いUMAとの魂の繋がりから霊力の扱い方、その積み重ねられた経験や感覚を自分のものとしてインストールする。
(足に霊力を集中……いや違う、空を歩くんじゃない。宙に居続けるイメージ……)
アンリの全身を仄かに霊光が纏わり付き、その身に課せられた重力の拘束が弱まるのを肌で感じる。
透の手が差し伸べられた。目を瞑って意識を霊力操作に集中していたアンリは、それを最初から分かっているように取った。
「さ、一歩踏み出して」
健康に焼けた右足を踏み出し、
「次は左足」
上から引っ張る勢いに乗せてもう片足も空気に乗せた。少女は恐る恐るといった貌で視界を開き、己が為した所業の証を堪能した。
陸棲哺乳類として生まれた命として、切っても切り離せない間柄の大地から独立している。高さで言えば、身体強化による超人の跳躍力を持ってすればあまりにも低い視点。
だがその視界は下界のものより遥かに自由で、
「……は、ははァ!?」
「おっと」
魔法を使わずに空を歩くという所業を成し遂げた事に思わず笑みが溢れ、腹の力が抜けたからだろう。霊力の集中が乱れアンリは呆気なく重力へ囚われた。
地面と接吻を交わす前に透に手を掴まれ、霊力を渡される。
「ほらネ?」
「すげえな……お前の世界じゃ当たり前なのか、空を歩くのは」
「少し違うネ。こんな芸当が可能なのは
その場から大きく飛び退いた透は指を立て、そこに青白い光を灯しながら語り始める。
「生物学の話をしようカ。普通、生き物の体は物質で出来ている。血液、筋繊維、骨格、神経系、皮膚、細胞。これらの塊が肉体というわけだネ」
慌ててアンリも追いかけた。魔力を体内で
「この肉体を器として、魂は宿り、魂と器を守るように霊体ができ、その霊力が肉体を浸す事で生命エネルギーが生まれる」
「魂無き血肉に命は宿らない、って事か」
「そう。あと魔力は魂が肉体から捻り出す感じ」
「急に雑だなオイ」
「まあまあ。んで、ボクら
アンリは暫し言葉の意味を理解できず、まじまじと自分の掌と透の顔を見つめた。
「つまりだヨ。アンリとボクのこの体はただ細胞が寄り集まって出来たんじゃない。魔力の結晶や物質化した霊体でもあるんだ」
その言葉に引かれて、アンリの脳があるはずのない記憶を思い出した。延命として種族を変えられた際に与えられた、白崎透の血。今はアンリの体を粛々と流れるそれに刻まれた記憶がアンリの意思によって引き出される。
「
「そ。で
「……オレとの戦いじゃ何にも使ってなかったよな?」
「必要なかったからネ……話が脱線した。要は
絶に無秩序なる神速、白崎透。見参! 〜現代最速の異能力者にして最高位の現装使いは異世界で神となる〜 白食 透不 @syosekikakibonnu
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