第148話 大悪魔とは何だったのか

 本当に、あっけなく片付いた大悪魔騒動。

 ただ、この手の存在がこれだけって事もないとも思う。

 残った宇宙船はまだ動力も生きているし、情報も持っているみたいだ、という事で、そこはアルテミスさんに一存して私達は外で休む事にした。

 と言っても、大して動いていなんだけどね。


 休んでいると、トキワお兄様とキューキさん、スペリアお姉様とネージュが現れた。

 スペリアお姉様とネージュは私とシャルルの真の姿を見るなり


 「聞いてはいたけど……あんた達、マジカッコいい……」

 「ディーナ姉もシャルル姉も……素敵。」

 「お姉様?」

 「ネージュ?」

 「は!いやいや、ご苦労様だったね。」

 「なんかもう、姉たちは心配ないね、私、少し安心したよ。」

 「あはは、そうだね。ネージュ、心配かけたねー。」

 「お姉様たちにも、ね。」

 「で、あちらの男の子が?」


 スペリアお姉様はヒマに空いて昼寝しているタカとヒロを見てこんなことを言ったんだ。


 「あの子たちはイワセの住民になったのね。で、そのうち……」

 「スペリア姉、それはまだ言わない方が良い様な気がするよ?」

 「うふふ、そうだね。」


 何のことを話してるんだろう?

 それを聞いたルナ様達は、またまた微妙な微笑みで私達を見ていたんだ。

 えーっと、何だか、もやもやするんだけど……


 「おまたせ!あらかた情報は吸いあげたよ。さ、一旦引き上げようか。あれ?トキワ?」

 「ご苦労様でしたアルテミスさん。」

 「来てたんだね。そちらは妹さん達だね?」

 「初めましてアルテミス様、スペリアです。」

 「初めまして!私はネージュです!」

 「初めまして二人とも。っていうか、二人もまた凄い感じだねー。」


 そんなこんなで私達は一旦臨時待機所へと戻った。

 大悪魔という脅威は去ったものの、メナスやモンスターに関しては何一つ変わっていないので、待機は継続しているからね。


 「さて、それじゃあの大悪魔が何をしていたのか、から話そうかね。」


 アルテミスさんはあの宇宙船から抽出した情報の開示を始めた。

 私達待機組に加え、トキワお兄様とスペリアお姉様、ネージュが加わっている。

 今の話の内容は、通信機を相互会話できるようにして、全世界に散らばる拠点に同時通信されている。


 アルテミスさんが教えてくれた、大悪魔の行動目的。

 それは到底理解不能な、許す事ができない事だった。


 「生命が存在する星を発見し、その星の生命体を狩った数を、大悪魔の仲間と競い合っていた、だそうだよ。」

 「な……なんですか、それ……」

 「要するに、遊びで星々の生命を狩り取っていたってことかよ……」

 「ってことは、だ。」

 「うむ、仲間がいる、という事じゃな。」

 「そんな存在がまだ……」

 「そういや四天王がどうのこうの言っていたな。」

 「という事は、まだ襲われる星があるっていう事、ですよね?」

 「そんな……」

 「あ、でもだよ、それについては何とかなるかもよ?」

 「何だと?」


 アルテミスさんが言うには。

 大悪魔の仲間というか、同じ存在はもはや残り2体なんだそうだ。

 13,000年以上前から行われていたその蛮行、その時から今までで大悪魔の仲間はその数を減らしていったらしい。

 その存在は拠点を持たない流浪の存在らしく、何処から発生したのかは不明なんだって。

 ただ、襲撃した星々で補給などを行いつつ狩りを続けていて、大悪魔同士で成果の報告などをしていたらしい。

 そして


 「四天王とか言ってたけど、3体しかいなかったのか。」

 「アレはきっと“おやくそく”って奴だね。負け惜しみってやつだよ、たぶん。

 それでね、ノアの星に逃げてきた異星人、その異星人が暮らしていた星を襲ったのは、別の大悪魔だね。」

 「そうなのか?」

 「今回の奴とはつるんでいたみたいだけど、言わばライバルみたいな感じかな。通信記録もそいつが一番多かったね。で、だ。」

 「んん?」

 「そいつは今ここに向かっているみたいだね。」

 「え?」

 「今回の奴がやられたのを感知したんだろうね、救援なのか面白そうと思ったのかはわかんないけど、ここに来るのは間違いない。」

 「何とも……意味不明な輩じゃな……」

 「で、それはもう何とかなることは確実だからね。次はその大悪魔のスペックだ。」


 大悪魔は、力そのものはそれ程ではないようだ。

 本体の戦闘力に関しては、メナスと同じかそれ以下のレベルなんじゃないか、というのがアルテミスさんの予測だ。

 ただ、あの時私とシャルルに撃ってきた光線のような武器が脅威になるんだって。

 その武器はあの筒のような物から、ブレスレットのような物や被り物のようなものまで多彩な武器があるらしい。

 

 「あの船の中にもあったよ。フル装備となるとかなり厄介な武器になるかもね。」

 「それって、アレだろ?ルナ。」

 「ああ、アトモスフィアが装着していたものと同じだな。となると、だ。」

 「その光の礫さえ何とかしてしまえば殆ど脅威はなくなる、ですか。」

 「そう言えば、じゃ。この前ウリエルが何か言っていたな。」

 「ま、その辺はまた後で話すとして、だよ?」


 結局はその大悪魔そのものは脅威足りえない、と思って間違いないそうだ。

 ただ、アルテミスさんは別の、大きな懸念を幾つか抱いているみたいだ。


 「奴らはね、生命体を狩り取ることが目的なんだ。その気になれば毒や細菌の兵器だって躊躇なく使う可能性もある。」

 「BC兵器か!」

 「そんな兵器のデータもあったからね。装備しているとしたら、こいつはかなり危険だよ。」

 「びーしーへいき?」

 「猛毒やガス、致死性の高い化学薬品、細菌をばらまいて、周囲の生物を根こそぎ殺す、まさに悪魔の兵器だ。」

 「そんなモノが!?」

 「私がブルーの時でさえ、その残虐性と影響を鑑みて開発はしなかった程の悪しき兵器だ。」

 「そりゃアレだろ、核と同じくらい厄介なモンだろ?」

 「ああ、ある意味核兵器よりも残酷な兵器だな。」

 「とはいえ、だよ。あの船にそれらは存在しなかったな。結局取り扱いが難しいからなんだろうね、もし漏れ出たら自分がやられちゃうからね。」

 「ただ、その可能性は拭えない、か……」

 「まさに、大悪魔……」


 「それで、だ、アルテミス。」

 「ん?」

 「その残り2体の大悪魔はいつ頃ココに来るんだ?」

 「ん-とね、これは、言っちゃって良いのかな?」

 「良いと思う。というか、知っておかないといけないかもね。」

 「トキワが言うなら良いか。あのね、そいつらは2日後には来るね。わりと近場に居たらしいよ。だから今回の奴がやられたのをすぐに感知したんだろうね。」

 「場所はまだわかりませんか?」

 「ああ、それは間違いなくあの船の残骸の所だろうね。だから。」

 「そうですね。」


 「とりあえず態勢はアップルジャックのままとする。その、びーしー何とかは警戒する必要があるから、この付近の住民には一時避難してもらおう。」

 「わかったわトキワ兄。ネージュ、お願いできる?」

 「ひとまずリンツだね。そこから各国に、だね。」

 「俺とキューキはこのままここに居るよ。いいかなキューキ?」

 「もちろんだ。」


 「それでね、もう一つの懸念なんだけど……」


 アルテミスさんが言う。


 「アレ、自分と似た存在がこの星にいて、そいつの方が悪い奴だって言ってたんだ。」

 「そういえば、そんな事を言っていましたね。」

 「それってまさか……」

 「ああ、恐らくはメナスの事だろう。今となっては脅威度としてはメナスの方が上、だろうな。」

 「そっちはまた詳しく調べる必要がありそうだね。」


 2日後。

 予測通りにその大悪魔の残党がやって来た。 

 私達は戦闘隊形にはならず、気配を消しつつ待ち伏せている。


 そして、2隻の宇宙船から、それぞれ完全武装と思われる格好で、大悪魔が出てきた。


 「行きましょう!」

 「突撃だー!」


 私とシャルル、タカとヒロが真の姿となって襲撃する。

 こちらに気づいた大悪魔は、すかさずあの光の礫を放ってきた。

 筒のような武器、背中、頭、腕、足と、あちこちから放ってきた。

 けど、私とシャルルは全てを弾いている。

 タカとヒロも、あの剣で全て受けているんだけど、不思議な事に剣は光の礫を弾くんじゃなくて吸収しているみたいだ。


 大悪魔の攻撃を受けながら、私達はそのまま斬りこんで行く。

 もう、前回のような迷いは一切ない。

 秒殺だった。

 懸念されていたびーしー兵器らしき物はなかったみたいで一安心だ。


 これで、大悪魔の危機は完全に去ったことになる。

 でも、最大の疑問が残ったんだ。


 「結局、大悪魔ってなんだったんだろうな?」


 ルナ様の疑問は、全員が思った事だった。


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