第2話 カノンの日常(平日の朝編)
いつもの一日は、ピピピ……ピピピ……、という電子鳥のさえずりが鳴り響く夜明けから始まる。
カーテンの隙間から陽の差し込む部屋のベッドで寝ているカノンは重たいまぶたを開いて、覚醒する。
おはよう。
「もう朝か……。」
あくびとともに身体に目覚めのスイッチを入れる。
まだ顔は寝ぼけたままだ。
洗面所に向かったカノンはぼやけた思考で今日の日程を思い浮かべていた。
(今日はなんだったっけ……。)
歯を磨き、髪を整え、顔を洗う。
いつものルーティンだ。
「おはよう、私。」
おはよう、カノン。
こうしてカノンの毎日が幕を開ける。
☆☆☆☆☆
髪をまとめ、制服に着替えて、家から渡り廊下を歩いて喫茶店へ入ったカノンはいつものように朝食の準備をしようと考えていた。
「(陽気)おはよう、カノン。」
「(呆れ)……、おはようございます。」
「あれ〜、反応薄いねぇ〜。」
「珍しく早起きですね。」
「いいや、徹夜。」
「(少し怒った)寝てください。」
珍しく早起きしているユキに少しは関心したものの、そんなものは一時の幻想であった。
少し呆れた表情でカウンター席に座るカノンの前に一つの食事が置かれた。
「なんですかこれ。」
「朝食だよ。」
「見れば分かる。」
簡単なサラダとスクランブルエッグとベーコンが1つのお皿にまとまって、備え付けでスープとパンが置いてあった。
「……、新規のモーニングメニューですかこれ……。」
「そう、久しぶりにお見送りできるしね。」
「いつも寝ているからじゃないですか……。」
食事を口に運びながらカノンはユキと素っ気ない雑談をした。
今日はアメリカのとある会社が初めて商業での有人飛行についての話だ。
これまでは特定の過酷な訓練をしないといけなかったが、その必要もなく最低限の訓練で行けるようになる段階にまでようやく入口に来ていた。
「ついにここまできましたか。」
「早いものだね〜。これで月の開拓が進むと良いのだけどね。」
「そうだね……。」
「もしかして、前世ではここまで行ってなかった?。」
「まあ、前世の時はまだ月を開拓するどころか、中間地点の宇宙ステーションすら夢物語。SFの領域だったからね……。」
「あらら……、人工衛星の商業事業の段階の頃じゃしかないか……。」
「今はまあ……、だいぶ未来ですはい。」
岩波カノンは転生者である。
それも性別が変わる程度の転生。
早15年。高校生としても、もう半年近く女の子やってきたので所作が普通に年頃の少女である。
そしてそんな彼女の話をあっさり受け入れているユキは変態である。
「ご馳走様。」
「お粗末さま。」
「じゃあ、私はこれで。」
「うん、行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
カランと喫茶店の扉を開けて、カノンは外へ出た。
(暑っつい……。転生してもここは変わらんか……。)
身体を焦がすような……、焼き殺すような猛暑がカノンの身体を容赦なく蒸す。
(今日も一日、頑張りますかね……。)
熱風でガッツリ削れた体力とその重たい足取りで、イヤイヤながらカノンは学校へ足を運んだ。
カノンと喫茶店と銀河鉄道〜女の子に転生(♂︎→♀︎)して2週目の人生、何故か百合に挟まれている件について〜 アイズカノン @iscanon
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