カノンと喫茶店と銀河鉄道〜女の子に転生(♂︎→♀︎)して2週目の人生、何故か百合に挟まれている件について〜
アイズカノン
第1話 女の子に転生してから約15年、黄昏ている美少女を拾った話
さんさんと降り続く雨の中。
錆び付いて遊具に水の滴る少し古びた公園。
黒く、灰色の空に視界が霞むような雨のカーテンの中を歩く1人の少女がやってきた。
程よく長い黒髪を束ねて右肩に掛けたルーズサイドテールの髪型に星空のようにきらめく蒼い瞳、半袖の白いブラウスシャツに黒いスカートと赤い紐のリボンの制服を着た少女【
カノンが傘の隙間から見つめる先にはブランコのイスとともに濡れた長い黒髪に紅い瞳の儚い一人の少女。
「(一息ついて)どうしたの、【
「(少し驚く)あっ……、いや……。なんでもない……。」
そう否定する黒髪赤眼の少女、もとい初霜レイナはビジュアルだけなら水も滴る大和撫子といった感じだが……、実際はブランコごと一緒に濡れ、顔は下を向き、雨で濡れたブラウスからブラの輪郭と色が薄らと見えてしまっている。
「(少し赤くなりながら)はいこれ!。」
バサッ(タオルをレイナにかける。)。
「えっ?、えっ?。」
「(呆れ)初霜はずっとこのままでいるつもり?。」
「あの……、その……。」
「うちに来る?。」
「はい?。」
レイナにタオルをかけ、傘を持たせたカノンは勢い任せにブランコから、公園から連れ出して長い住宅街の道のりを歩く。
まるで迷い人を導く妖精のように……。
☆
2人が辿り着いたのは寝台列車の一部の車両が併設された喫茶店ような建物。
建物を囲む塀。
建物の前にパラソル付きのテーブルがいくつかあるものの、この雨の中では意味を成していなかった。
そして本題の建物はと言うと、見た目だけなら普通の喫茶店という印象だった。
白い壁と蒼い屋根の木造の建物。
ただ若干昔の駅舎に見えるような外観とレイナは思った。
「ここがあなたの家?。」
「(少し濁す)まあ……、そんなところかな?。」
「(苦笑い)なんで疑問形?。」
ガチャ(喫茶店?のドアを開けるカノン。)。
「どしたの?、入らないの?。」
「あっ……、うん。お邪魔します。」
ドアをくぐったその先に待っていたのは、まあ普通に普通の喫茶店だった。
カウンターテーブルが併設されたキッチン。
程よい配置のテーブル。
そして店長の趣味が垣間見える本棚。
「とりあえずここに座って。」
ポンポンとレイナにカウンター席へ促すカノン。
「う、うん。ありがとう……。」
「(気軽に)とりあえず紅茶でいい?。」
「うん……。」
パカッと缶を開け、手慣れた動作で適量をポットに入れるカノン。
それからやかんに水を入れ、コンロに火をつける。
ガチャっと裏扉を開け、倉庫から電気式のヒーターを2台取り出して、レイナの後方に配置する。
「これでいいかな……。」
ヒーターにスイッチを入れ、カノンは再びキッチンへと戻る。
それからしばらくして、ヒューと蒸気の汽笛が店内に響き渡る。
カノンは時間短縮のため、ポットを温めずにそのままできたてのお湯をサァーと入れた。
そして茶葉を躍らせ、抽質された紅茶をコップにうつした。
コトッ(キッチンからテーブルにコップを置く。)。
「あったかい物どうぞ。」
「あっ……、あったかい物どうも。」
ゴクッ(紅茶を飲むレイナ。)。
「(小声)あったかい……。」
ほっとした様子でカノンはキッチンの棚からホットサンドメーカーを取り出し、冷蔵庫から必要な材料を取り出した。
パンとチーズとハムとケチャップ。
それらをホットサンドメーカーに入れ、挟み、焼く。
「おっ、もう帰ってきてたか。」
「(呆れ)今頃起きたですか、北上店長。」
「いやはやちょっと復習をね。」
「また『銀河鉄道999』を一気見したんですか……。」
「そんな顔で見ないでよ〜……。」
ハイハイと裏手からやってきた北上店長こと【
ユキは綺麗な黒髪のショートヘアに月のような黄色い瞳の見た目だけなら美女の人。
「(おちょくる声)おやおや……、カノンちゃんがお客さんを連れて来るなんて珍しいね。」
「たまたま公園で黄昏てたからお節介で連れてきただけの自己満足だよ……。」
「自己満足ねぇ……。」
コトッ(レイナがコップを置く。)。
「どうも、岩波さんのクラスメイトの初霜レイナです。」
「あぁ、よろしく。」
そしてユキは再び裏手に帰っていった。
と同時にカノンはホットサンドを作り終える。
「はいどうぞ。」
「うん、ありがとう……。あのお金は……。」
「ん……、あぁ良いよ。コレは僕のお節介だし。」
「そういう訳には……。」
「とりあえず初霜さんは身体をあっためて、風邪ひかないように専念して。」
「はい……。」
しばし納得出来ない様子で食事をとるレイナ。
紅茶と食事のお陰か、ある程度落ち着いた彼女は改めて喫茶店内を見渡した。
額縁に飾られた銀河や星々の数々。
鉄道に関係する小物も多数。
そして、天井に近い棚には蒸気機関車の列車が周回していた。
「あの……、岩波さん。」
「ん、何?。」
「今更なんですが……、ここって。」
「あ、あぁ……。ここは喫茶【銀河鉄道まほろば】。まあ、ちょっと頭のおかしい店長がいる趣味の喫茶店だと思ってくれればいい。」
「(壁越しに)頭がおかしいとはなんだ!。」
「(苦笑い)あはは……。」
再び紅茶を飲むレイナ。
しかしその瞳はカノンを写していた。
それが一目惚れなのかどうかはこの時のレイナにはまだよくわかっていなかった。
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