あきなくて
結音(Yuine)
チラシの裏に書きつくる
拝啓
蝉の声で目覚める季節となりました。 あれから、先生はいかがお過ごしでしょうか。
こちらは、朝早くから子ども達に付き合わされて、ラジオ体操の日々を過ごしております。
先生のお子さま達は大きくなられたことでしょうから、もうラジオ体操は卒業されましたか。
子ども好きの先生のことですから、お子さま達が卒業された後も、地域のラジオ体操に参加されていらっしゃるのかもしれませんね。
奥さまは、お元気でいらっしゃいますか。各所で奥さまのお名前を拝見いたしまして、そのご活躍振りに「さすがは、先生の奥さま!」と、感服しております。
先生の目指しておられたものは、奥さまが受け継いでいらっしゃるのですね。
先生。今年のお盆も、ちゃんと帰ってきてくださいね。
できたら、
お
お素麺。やっぱり私は毎日でも飽きないと思います。
先生からの「毎日素麺だったら飽きるだろ?」って、問い掛け。当時の私が小首をかしげたために、先生は私のことを大変心配してくださいましたね。でも、私 思ったんです。「毎日違う味付けにすれば、毎日お素麺でも飽きることはないだろうな」って。言いませんでしたけど。当時の私には、「飽きる」ってよくわからなかったんです。今もよくわかっていないとは思いますけど。先生が、あの時伝えたかったことは、分かるようになったと思いますよ。これでも。
あれから、幾らかの月日……否、年月が経ちましたから。
昨今の奥さまのご活躍振り。それは、本来なら先生が辿るべき道だったように思えてなりません。 先生のお名前を上書きするかのように奥さまのお名前を拝見するのですから。先生としては誇らしいことでしょうか。奥さまも教え子のひとりですものね。
叶うことなら、私も先生の後を継ぎたかった。先生の研究を手伝って、先生の提唱する技法を現場で実践したかった……
だから、私は私なりに先生の言葉を思い出し、現場に立つようにしています。
今でも思い出します。先生のご出棺時に流れた曲を。とっても先生らしい選曲でした。病床で先生自ら準備されたのですよね。そんなところも、先生らしいな、と思って。
先生。今年で何度目になるのでしょうか。先生が旅立たれた日がもうすぐですね。
私は今年もこの遠くの空から、先生のことをお慕い申し上げております。
敬具
あきなくて 結音(Yuine) @midsummer-violet
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